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青い残り火
第10章 第10章
一馬は大人の女性に憧れているだけで現実を見ていない。過去は変えられない。でも私がすべてを許せば、きっと目が覚めて戻ってくる。芽衣には彼を説得する自信があった。

だって不自然だもの

西崎のような陰気な女を、一馬の心に居座らせるわけにはいかない。第一、当の本人が一馬の事など眼中に無い様子だった。それは彼もわかっている筈だ。

もう目が覚めているかも

あの日水を浴びた後の、一馬のすっきりとした顔を勝手に想像した。



A棟の昇降口を通り抜けると、真昼の太陽が中庭を眩しく照らしていた。先日身を隠したB棟の側壁が、芽衣の覚悟を揺るがせようと立ちはだかっている。右手に見える銀杏の木を確認しながら歩を進めると、中庭に水を巻く一馬を見つけた。

高く上がるシャワーの中に美しい虹を見つけた芽衣は、嬉しくなって一馬に駆け寄った。だが彼は、虹を楽しんでいたわけではなく、職員室の方を見上げていた。
何かを待っているような、暗闇で光を求めているような一途な瞳で。

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