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青い残り火
第10章 第10章

日没を過ぎた校庭に人影はなく、体育館から漏れてくる明かりだけが芽衣を勇気づけた。
開いた扉から中を覗くと、ボールの手入れをしている者や雑談をしている者、着替えをすませてロッカールームから出てくる者もいる。
「あ、藤村先輩の……」
一人の部員が芽衣に気付くと、その声を聞いた他の部員達が次々と振り向いた。
「おーい、一馬ぁ、川口芽衣がきてるぞー」という渋谷の大声に野太い歓声が上がり、それに押し出されるように一馬が現れた。
「芽衣……」
複雑な表情の彼とは対照的に、二人の周りは盛り上がっている。芽衣は、事情を知らない皆の様子に安堵し、近付いてきた一馬を笑顔で迎えた。
「ちょっと話があって」
「……じゃあ、そこで」
着替えを済ませていた一馬に「一緒に帰ろう」と、言ってほしかった芽衣は少し傷付いたが、扉の外で足を止めた彼に、「急に来てごめんね」と小さく笑った。一馬は黙ったまま、重い扉にもたれて空に浮かぶ月を眺めた。
開いた扉から中を覗くと、ボールの手入れをしている者や雑談をしている者、着替えをすませてロッカールームから出てくる者もいる。
「あ、藤村先輩の……」
一人の部員が芽衣に気付くと、その声を聞いた他の部員達が次々と振り向いた。
「おーい、一馬ぁ、川口芽衣がきてるぞー」という渋谷の大声に野太い歓声が上がり、それに押し出されるように一馬が現れた。
「芽衣……」
複雑な表情の彼とは対照的に、二人の周りは盛り上がっている。芽衣は、事情を知らない皆の様子に安堵し、近付いてきた一馬を笑顔で迎えた。
「ちょっと話があって」
「……じゃあ、そこで」
着替えを済ませていた一馬に「一緒に帰ろう」と、言ってほしかった芽衣は少し傷付いたが、扉の外で足を止めた彼に、「急に来てごめんね」と小さく笑った。一馬は黙ったまま、重い扉にもたれて空に浮かぶ月を眺めた。

