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青い残り火
第13章 第13章
三島の名前までしるかよ

ぱらぱらとせわしくページを行き来するうち、裏表紙一枚が左手に残った。

⚪⚪高校三年二組 三島省吾

油性ペンで丁寧に書かれた文字は、一二年次の学年と組名が線で消されている。

これって三島の……

一馬ははっとしてまた紙をめくり、迷わず漢字一文字を探し当てた。

みーお【澪・〈水〈脈】

「やっぱり……」

【愛する】【澪】

愛する 澪

自分の辞典に残したしるし。三島が西崎に託したのか、西崎が偶然見つけたのか。彼女はいったいいつからこの辞典を胸に抱えて生きてきたのか。

……もしかして、親が離婚した時?

一馬は赤い輪の中の『澪』の字を見つめ、記憶の中にいる彼女を瞼に浮かべた。

辞典はもういらないのか
これがなくても生きていけるってことか
……二人で?

彼は事務室を目指して階段を下りた。

俺がこれを持っていてどうなる
もうどうでもいい事じゃないか


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