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青い残り火
第14章 最終章
会場案内の葉書を手にした一馬は、レストランの看板を見上げて立ち止まった。
昨夜しつこく電話してきた渋谷は、今朝もメールで、遅刻するなと念押ししてきた。
カジュアルなワイシャツに薄手のジャケット。場違いな格好でないことを祈りつつ、ドアを押し開けて店内に入った。

「よぉ一馬、久しぶりだな」

後ろから鈴木の声がして振り向くと、スーツ姿に髭を貯えた男が桃香と並んで立っている。今の呼掛けが聞こえたのか、一馬の周りに人が集まってきた。

「お前生きてたのかよ」

「一馬、なんか大人になったね」

「また背伸びた?」

「やっぱかっこいい」

「先生になったんだって?」

「生徒に手ぇ出すなよ」

その一つひとつに適当に答えながら、一馬は入り口に立ったままの男と桃香を何度も見直した。
髪を七三に分けて固め、縁の無い眼鏡を掛けたその男は腕組みをしてにやにやしている。

「やっぱ鈴木?」

「おぅ、プログラマー鈴木と呼べ」

「は? あははははは………お、お前、あははは……」

周囲も鈴木を指差して笑い始めた。渋谷も爆笑している。

「ウケた? ウケたな、よし!」

「よかったね」

桃香が嬉しそうに鈴木を見た。

「お前が来るっていうから驚かせてやろうと思って桃香と考えた末にこうなった」

「えへっ。作戦成功」

「あはは、せ、成功だからそのヘンな髭やめろ」

鈴木が髭をべりっと剥がすと更に笑いと拍手が沸き起こり、会場が一気に和んだ。

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