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青い残り火
第14章 最終章
あの時の衝撃を、一馬は懐かしく思い出した。
「ちょっと、なににやけてるの?」
総子が気味悪がって少し仰け反った。
「べつに何でもないよ。いろいろ思い出してた」
一馬は外を眺め、コーヒーをまたひと口飲んだ。
「一馬、ほら、芽衣綺麗になったでしょ」
桃香はいきなり二人を対面させた。
戸惑う一馬に「久しぶり、元気だった?」と微笑んだ芽衣は、以前のように一馬の顔色を伺ってはいなかった。
「芽衣ね、今、ホテルのコンシェルジュなのよ、すっごく忙しいの。時間を作って来てくれたのよ」
「へぇ……」
ホテルのフロントに立つ芽衣が容易に想像できた。客の要望に笑顔で応え、仕事をそつなくこなす。
きっとそうだ
今の彼女なら
鈴木が桃香との結婚を発表して盛り上がる会場の隅で、芽衣は、友達と顔を見合わせ嬉しそうに笑っている。一馬はその様子に見とれていた。周囲の視線を気にする余裕もなかった。誰かに見とれるのはあの時以来だった。
心が勝手に騒いだ。彼は、勝手過ぎる自分の心を押さえつけることに必死だった。
「ちょっと、なににやけてるの?」
総子が気味悪がって少し仰け反った。
「べつに何でもないよ。いろいろ思い出してた」
一馬は外を眺め、コーヒーをまたひと口飲んだ。
「一馬、ほら、芽衣綺麗になったでしょ」
桃香はいきなり二人を対面させた。
戸惑う一馬に「久しぶり、元気だった?」と微笑んだ芽衣は、以前のように一馬の顔色を伺ってはいなかった。
「芽衣ね、今、ホテルのコンシェルジュなのよ、すっごく忙しいの。時間を作って来てくれたのよ」
「へぇ……」
ホテルのフロントに立つ芽衣が容易に想像できた。客の要望に笑顔で応え、仕事をそつなくこなす。
きっとそうだ
今の彼女なら
鈴木が桃香との結婚を発表して盛り上がる会場の隅で、芽衣は、友達と顔を見合わせ嬉しそうに笑っている。一馬はその様子に見とれていた。周囲の視線を気にする余裕もなかった。誰かに見とれるのはあの時以来だった。
心が勝手に騒いだ。彼は、勝手過ぎる自分の心を押さえつけることに必死だった。