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青い残り火
第14章 最終章
男は職場の同僚と深い仲になり、妊娠させたというのが事の真相だった。

芽衣は一馬との三度目の食事で過去を打ち明けた。

「でもなんだか最近、彼に合わせて無理に背伸びしてた自分にはたと気がついたの。なんでかな、変だよね、ふふっ」

その言葉は一馬を勇気づけた。

「俺、芽衣が好きだ」

笑顔をしまい、真っ直ぐに一馬を見つめる芽衣は「今、なんて言ったの?」と聞き返した。

「芽衣が好き、です」

テーブルの上に身を乗り出した芽衣がもう一度言った。

「なんて?」

「……だからその、好きなんだ、芽衣の事が」

うっすらと瞳を濡らし背筋を伸ばした彼女は「その言葉、初めてだね」といって微笑んだ。

十年経っていた。
目の前にいる彼女はぐっと大人びて、仕草も眼差しも、心にも余裕が見えた。

「俺と付き合ってください。 俺、もう芽衣を悲しませたりしません」

頭を下げ、右手を伸ばした一馬に芽衣は少し面食らった。

「……よろしくお願いします」

柔らかく細い芽衣の手。その指先には、桜色のマニキュアが薄く光っていた。







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