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青い残り火
第14章 最終章
《三島画廊》
縦に長い木目の看板が目に入った。打ちっぱなしのコンクリート二階建てのその建物は、入り口がガラスの一枚扉で、看板が無ければ誰もそこが画廊とは気付かない。
ドアに掛かったホワイトボードに近付くと、『只今休憩中。15時に戻ります』と書かれている。癖のない丁寧な字。それは間違いなく、西崎澪のものだった。
ドアの向こう正面には花が飾られ、右側にはパンフレットなどを並べた棚と広い机、その奥には引き戸が見える。左手には下りのスロープがゆるくカーブしていて、その奥が展示室になっていると想像できた。
「お客さん? あと十分せんとそこ開かへんよ」
振り向くと散歩の途中なのか、杖をついた老人が立っていた。
「いえ、客ではないんです」
「そうか。そこは誰でも気軽に入ってええ画廊なんや。けど今はあかん、あと十分や、ふぁははは」
老人は両手を杖の頭に重ねて歯のない顔で愉快そうに笑った。