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青い残り火
第14章 最終章
間もなくあの扉が開き、西崎澪が顔を出す。その傍らには三島がいて、ホワイトボードを外しにくる。
俺を見てどんな顔をするだろう
なにを言えばいい
どう謝れば……
「ときどきあの机で奥さんが書き物してはるわ。ほら、あれ、見にくいけどぼろぼろになった辞書あるやろ、あの棚のとこ。あれがお気に入りや。あんなんなんぼでもわしが買うてやるのに、ふぁははは」
俺が水を掛けた国際辞典……
過去の自分がそこにいた。
彼女はあの辞典をそばに置き、なにを思うのだろう
許されない愛の罪は、今も彼女を苦しめているだろうか
そして、俺を思い出すことがあるだろうか……
目頭が熱くなった。
「俺、急ぐんでもう行きます」
「そうか? 残念やなぁ。またおいで」
一馬は一礼して来た道を戻った。あの老人に涙を見せたくなかった。地元の人達に親しまれ、仲睦まじい二人の暮らし。そこに以前の教え子が現れ、謝罪したところでどうなる。
俺を見てどんな顔をするだろう
なにを言えばいい
どう謝れば……
「ときどきあの机で奥さんが書き物してはるわ。ほら、あれ、見にくいけどぼろぼろになった辞書あるやろ、あの棚のとこ。あれがお気に入りや。あんなんなんぼでもわしが買うてやるのに、ふぁははは」
俺が水を掛けた国際辞典……
過去の自分がそこにいた。
彼女はあの辞典をそばに置き、なにを思うのだろう
許されない愛の罪は、今も彼女を苦しめているだろうか
そして、俺を思い出すことがあるだろうか……
目頭が熱くなった。
「俺、急ぐんでもう行きます」
「そうか? 残念やなぁ。またおいで」
一馬は一礼して来た道を戻った。あの老人に涙を見せたくなかった。地元の人達に親しまれ、仲睦まじい二人の暮らし。そこに以前の教え子が現れ、謝罪したところでどうなる。