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第4章 第４章

教室を見渡した西崎は、反応のない生徒達を気にする事なく再び黒板に向かった。

「七五調の定型詩ですので暗記している人がいるかもしれませんが……」

「意味がわからないので覚えられませーん」

鈴木の声が皆の笑いを誘った。

「それではここに、この作品の現代語訳がありますので参考にしてください」

何者にも左右されない淡々とした口調で、彼女は原作と語訳がプリントされた用紙を最前列の生徒六人に振り分けて配った。

「この作品は第一連が若い二人の出会い、第二連が恋の始まり、三連が恋の高まり、そして最後は成就、という流れで構成されています。そのうち一、二、四連には、上げ初めし、人恋初めし、ふみそめし、と同じ言葉が使われていて、"恋"またはひらがなで"こひ"と記されている箇所も三ヵ所見つけることができます。これがこの初恋という作品の……」

一馬は今日のバイトの事を考えていた。久しぶりに真琴と理恵子が揃って店に来るらしい。