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青い残り火
第4章 第4章
雨か……
西崎のか細い背中が目に浮かんだ。
また濡れてないよな……
「ねぇ聞いてよ、あそこの席のほら、胸のデカイ人、今なんて言ったと思う? "あ、一つ追加していいですか? 藤村一馬くんを一人、お持ち帰りで" だって」
さらに話は続いた。
「だから私、"メニューにないものはご用意出来ません、失礼します″ って言ってきちゃった。ねぇ一馬、簡単に名前とか教えちゃだめだよ。まったく、おばさんはおじさんと遊んでろっつーの」
せめて一馬の相槌ぐらいはと期待した美弥は肩透かしを食らった。無言でテーブルを拭き続ける彼の視線はどこにも定まっておらず、手元に届かない位置で浮いている。
「藤村、7番テーブル呼んでるぞ!」
「あ、はいっ」
店長に怒鳴られた一馬は、怪訝な顔で自分を見ている美弥に気がついた。
「美弥さん、雨降ってきたみたいなんで今日は俺走って帰ります。ちょっと熱っぽいんで」
「あ、でも私傘あるから……」
送ってあげる、と言う美弥を残し、一馬は客席に向かった。
西崎のか細い背中が目に浮かんだ。
また濡れてないよな……
「ねぇ聞いてよ、あそこの席のほら、胸のデカイ人、今なんて言ったと思う? "あ、一つ追加していいですか? 藤村一馬くんを一人、お持ち帰りで" だって」
さらに話は続いた。
「だから私、"メニューにないものはご用意出来ません、失礼します″ って言ってきちゃった。ねぇ一馬、簡単に名前とか教えちゃだめだよ。まったく、おばさんはおじさんと遊んでろっつーの」
せめて一馬の相槌ぐらいはと期待した美弥は肩透かしを食らった。無言でテーブルを拭き続ける彼の視線はどこにも定まっておらず、手元に届かない位置で浮いている。
「藤村、7番テーブル呼んでるぞ!」
「あ、はいっ」
店長に怒鳴られた一馬は、怪訝な顔で自分を見ている美弥に気がついた。
「美弥さん、雨降ってきたみたいなんで今日は俺走って帰ります。ちょっと熱っぽいんで」
「あ、でも私傘あるから……」
送ってあげる、と言う美弥を残し、一馬は客席に向かった。