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青い残り火
第6章 第6章
二人が窓から消えると、他の生徒に混じって一馬の横顔が見えた。

「かず……」

慌てて口を押え、気になる彼の視線を辿る。三島は水呑場で手を洗っている。女の子達は彼がB棟に入って行くまで見守る筈だ。だが、一馬の視線はそこにはなかった。
B棟の正面、C棟へと向かう神谷を追ってもいなかった。彼はひとり、C棟の出入り口近くに立つ銀杏の木をじっと見ていた。

夏の日差しを受けて、青々と葉が茂る背の高い木。その下に西崎澪がいた。彼女は、前を通り過ぎる神谷に会釈している。

「え……、なに、辞書? …………ははっ」

それは嘲笑だった。神谷と西崎の様子が、麗しいお嬢様と召し使いのように見えて仕方がない。

"ご苦労様"
"いってらっしゃいませお嬢様"

そんな台詞が聞こえてきそうだ。

「ふふっ、その辞典、重くないの? 」

銀杏からセキレイが二羽飛び立ち、花壇の間を駆け回っている。

あれを見てたのか

振り向くと一馬の横顔は消え、無人になった中庭に、セミの声が細く響いた。


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