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青い残り火
第1章 第1章
「えーと、前にも言いましたが、大学への進学を希望している人はですね、確実な評価を貰えるよう引き続き……」
ノックが二度響き、ドアが横に開いた。
「失礼します。あの、富田先生」
「は、はい」
富田の手から出席簿が滑り落ちた。
「あ、す、すぐ行きます」
床に落ちた物を拾うと今度はボールペンが胸ポケットから落ちる。
「あ……」
再びそれを拾い上げた富田の顔は焦りからなのか紅潮していた。
「な、なんでしょう、西崎先生」
ドアに駆け寄り、廊下にいる西崎の前に立った。
「うわぁ、地味同士」
「ジミ田のやつ、分かりやすいリアクションだなぁ。ウケる~」
「がんばれー」
ざわつく教室内では「ジミ田だけは無理」「あたしも。寝ぼけたダサいおじさんだし」などと言う女子と「いや、スカした三島よりは良いヤツだ、ははっ」という男子の笑いが飛び交った。
癖のある髪を無造作に結わえ、長くおろした前髪に眼鏡をかけた西崎澪は、いつも俯き気味に歩く目立たない教師で、分厚い国語辞典を必ず教卓に置く事から『辞書』というあだ名だった。
ノックが二度響き、ドアが横に開いた。
「失礼します。あの、富田先生」
「は、はい」
富田の手から出席簿が滑り落ちた。
「あ、す、すぐ行きます」
床に落ちた物を拾うと今度はボールペンが胸ポケットから落ちる。
「あ……」
再びそれを拾い上げた富田の顔は焦りからなのか紅潮していた。
「な、なんでしょう、西崎先生」
ドアに駆け寄り、廊下にいる西崎の前に立った。
「うわぁ、地味同士」
「ジミ田のやつ、分かりやすいリアクションだなぁ。ウケる~」
「がんばれー」
ざわつく教室内では「ジミ田だけは無理」「あたしも。寝ぼけたダサいおじさんだし」などと言う女子と「いや、スカした三島よりは良いヤツだ、ははっ」という男子の笑いが飛び交った。
癖のある髪を無造作に結わえ、長くおろした前髪に眼鏡をかけた西崎澪は、いつも俯き気味に歩く目立たない教師で、分厚い国語辞典を必ず教卓に置く事から『辞書』というあだ名だった。