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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第23章 天地開闢
 だが子龍の形をしたそれは、ぽつりと一言……縛られていたのです、と呟く。
 人に、縛られていたと。
 それだけを哀しそうに呟き、子龍だったものはぽつぽつと異なる生を語り始める。

***

 『……私は古、その土地の田畑を潤し人々の暮らしを支えた、山中にある水源の主でした』
「……」
 それはまだ人と神が近くにあった頃の話……。深い山と森の中にあって美しい水を湛えていたその池は、土地の人々に守られ、またこの神も丁重に祭られていた。
 しかし豊葦原は時代と共に変化していく。その生の短いがために、生き急ぐ人間達の発展の度合いは異常な程に速かった。
 鳥も獣も、虫も花も、人でさえ。追い付けないものは淘汰されていく。
 そうして村は町へ、町は都市へ。その過程で山は徐々に削られ、水の流れも変えられた。池も新たに湧き出る水を失い、流れ出る場所を失い、滞って濁っていく。
 自然を征した人間に、もう神は必要なかった。その存在は希薄となって、忘れられていった。
 『……けれど、私はそれでも良かった。今でこそ望まれぬ神ではあれ、古の世で人と共に生きていた頃の想いまで濁るわけではない……。或いはそれは、私が水神であったからか。流れのまま朽ちることも、苦ではなかった。生というものは廻る、そういうものだと……生まれながらに知っていたのです』
「……」
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