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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第23章 天地開闢
 そして年を重ねるごとに停滞していく水の中で、その底に溜まる泥の中で、ゆるゆるとその神は眠った。
 ……言っても、信仰は完全には失せた訳ではない。山に分け入る途中にはその標となる小さな小さな碑があって、風化はしていたが何かものを捧げてくれる人間もいた。人の中には何かを感じてくれる者も在るのか。娯楽の山歩きで人が集まるような、そんな場所が近くにできたらしかったが……だからこそ例えば、幼子が父母に言われるまま小さな手で置いてくれるような野花や木の実は嬉しかった。意味も分からず小石を積んで塔を作る、そんな人の手遊びも好きだった。
 ……ただ皺だらけの手で置かれた銭だけは、申し訳なかった気もする。人の暮らし向きは分からなかったが、水神として返せるものはもう何も無い。何もできないのに、あんなにも美しい黄金、白銀の銭を野晒しにさせてしまって良かったのだろうか。
 だからそういう時はただ、置いてくれた人間の幸せを願った。もっと別の、この水の遥か遥か上におわすであろう、力ある遠い神に。
 ……そんな細やかなものではあったけれども、緩やかな幸せと共に在った死は、眠りに落ちる間際のまどろみのように心地好いものだった。
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