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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第23章 天地開闢
 「……分かるか? 神依。……禊や童だけじゃない、俺だってずっと……お前のこんな顔が見たかった。会いたかった……」
「私も……ううん。本当は……少し怖かった。……ごめんなさい」
「それは……お前が謝ることじゃない」
甘やかだったはずの囁きに、不意に神依は瞳を翳らせ、怯えるように身をすくませる。
 素戔鳴の屋敷を出る時、一度は収まってくれたはずの不安が再びじわじわと、心の中に滲み始めてしまった。幸せを感じれば感じる程に自分自身への不信が深まり、女としての自信を疑ってしまう。
 髪は少しずつ伸びてくれた。けれど体はまだ綺麗とも元通りとさえも言えない。それを言葉にして拒否されるのが怖くて、事実をさらけ出すことができなかった。それで拒まれてしまうくらいなら、いっそこの美しい真白の衣(きぬ)で傷を覆い隠して、今のまま楽しい時間を続けさせてほしかった。それだけで良かった。
 けれどもそれは我儘なのだろうか。持つ持たないに関わらず、女は男の望む全てを捧げ、或いはその望みに最高の状態で適(かな)わなければ、愛情を貰えない生き物なのだろうか──。
 しかし日嗣はそれを責めず、労りの愛撫と言葉に変えて微笑んだ。
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