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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第5章 いざない
【1】

 その先は自然の洞窟になっていた。
 歩く道筋だけ細く均されており、さらさらとした砂が少女の足をくすぐる。灯も更に減らされており、その明かりが届くところも似たような形の岩ばかりで目印になるような景色もなく……時間の経過すらも分からない。
 心細さに振り向いて、まだ石室の灯りが見えるかどうか確かめたかった。しかしそれも許されない。
 たまに何重にも反響する水滴の音が響いて、その度に自身を導いてくれる手を握り直した。それだけがこの暗闇で感じる、唯一の温もり。
 (どこまで下るんだろう……。その先に、何があるんだろう……)
このまま下っていけば、あの雲海を突き抜けてどこか別の世界へ行ってしまうのではないか──そう思って、しかしそれが真実のような気がして、ゾクリと背筋に冷たいものが走る。
 せっかく戻ってこれたのに。
 せっかく良い出会いがあったのに。
 せっかくここで生きる場所を見付けたのに。
 ……帰ってこれるのだろうか。
 また禊に会えるだろうか。意地悪な言葉でもいい。また童と話せるだろうか。楽しい時間。
 そういえば……猿彦と何か約束をしていなかっただろうか。どうして今まで忘れていたのだろう。
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