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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第5章 いざない
 それはあの異形の神が密やかに繋いでくれた“縁”だったのではないだろうか。気付かなければ、無いものと同じ──でもそれを果たす時、傍らにあの美しい神は在ってくれるだろうか。
 だけど、この先に行ったらもう会えないような気がしてならない。誰とも会えなくなって、忘れられてしまう気がしてならない。
 一歩、一歩と歩むごとにそんな不安が生まれ──それで頭が埋め尽くされていく頃、ぱちゃりと足が冷たい水を踏んだ。
「──あ」
裳が水にさらされて、しかしそれで──辺りがほんの少し明るくなっていることに気付いた。美しい緑を湛えた水と白い砂。ごく浅い川だった。
 久々に見る色に、少女はそれを追うように足を進める。あの苔のような色をしていると思った。視界の端に映る洞主の裳も水に揺れていて、声は無くとも一人でないことが少女の心を落ち着かせた。
 そしてどれだけ水の中を歩いたのか、川から一歩上がった瞬間──
「──え?」
それは唐突に少女の目の前に現れ、四方に広がって少女を包み込んだ。

***

 『──な……あ』
気付けば少女は一人、真白い空間のただ中に浮かんでいた。
『どうして……、洞主様……洞主様!?』
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