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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第24章 稲依姫
【1】

 長雨の後の秋の山々は鮮やかに黄葉に覆われ、里の野花も彩り豊かにして……その年の淡島は一面、錦繍(きんしゅう)の美しさに満ち満ちていた。
 邑(むら)ごとに五穀の実りも厚く海の恵みも豊潤にして、鎮守の社には畑の菜から海の菜まで、あらゆる幸がうずたかく積まれ奉られる。木の実や果実も一際丸く甘く肥え、たわわに実ってその枝蔓をしならせていた。

***

 「──だから兄ちゃんはいいってば! ついて来られても俺、どうしていいか分かんねーもん!」
「いいからお前は黙って俺に鎌の使い方や紐の結び方を教えていればいい。はざ掛けというのか? あれもやってみたい」
「そんなの匠だって困るよ! 何とか言ってよ一ノ兄! 一ノ兄、姉ちゃーん!!」
 そうして徐々に遠ざかっていく弟分の声に、禊ははあと小さくため息を吐く。自身の立場もわきまえず居候を決め込み気ままに振る舞うその男神と、毎朝同じような問答を繰り返しては最終的に抱えられるようにして連れ去られる弟分と──禊に取ってはそのどちらもが愛しくうるさく、またあまりに子供染みている。“やんちゃ”な弟が増えたようだと溢せば、縁淵でどかりと座り、呑気に手を振っていた猿彦が笑った。
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