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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第24章 稲依姫
 「……なに、少しの辛抱です。遥か上天に坐(ま)します父上も、すぐにこの実りと浮かれた空気に酔うて、何もかもをお許し下さるでしょう……。一度は自らが得た喜びです。ただ父上には、改めて受け入れ、悼むにしばしの時が必要というだけ……」
「……」
「そしてその御心に添えるのは私達ではなく、直に父上に剣を向けた馬鹿者と、母上の依りとなったあの巫女だけです。……待ちましょう」
「……うむ」
 諭すように語れば、戒められた気分も多少は変わったのだろう──途端に光の色を濃くした太陽に、月読は嫌そうに眉をひそめると立ち上がり、天照を床に下ろす。
 「さて……姉上がこのような蜥蜴に直に触れることもありませぬ。水槽でも持ってこさせますので、しばしお待ちを。……それから私はこれから眠るので、少し翳(かげ)らせて下さい……」
「うむ!」
「……」
返事の割りに、願いは微塵も叶えられる様子がない。
 やがて姿を消した月読に代わり、水槽を持った遣いがやってくれば天照はいそいそとそれを受け取り子龍の元へと駆け寄った。
 天照には一抱えもあるような、丸い硝子の器。透明度も高く、なめらかに磨かれた最高のもの。
 水を張って呼んでやれば、小さな龍は嬉しそうにそこに飛び込んだ。
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