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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第7章 兆し
【1】

 奥社を降った神依の一日は、忙しいながらも半月を過ぎる頃には完全に固定化されてきた。
 まず毎日、日の出前に禊に起こされ身形を整えたら神棚と屋敷神の祠へ酒と米、穀類をお供え。そのまま進貢の広場へ向かい、献花を終えたら朝餉を摂り、後は普通なら自由な時間なのだが神依には巫女舞の稽古が待っている。
 そんな新たな暮らしの中で、神依が最も不可思議な思いを抱いたのが進貢──そして淡島の巫女達だった。
 保護者でも従者でも……神でもない、自分と全く同じ存在。
 朝靄の中、自分と同じ衣を纏った多くの巫女が思い思いに花を摘んでは朝露に袖を濡らし、しずしずと中央の社に進んでいくその様は本当に幻想的で美しかった。
 ──美しかったが、どこか浮世離れしているようにも見える。
 (それをこの“淡島”で思うこと自体が、もう間違いなのかもしれないけど……)
 ともかく巫女も覡も神依が思っていたより数が多く、社が露台のようになっていたのは四方から花を供えられるようにするためだった。
 神依もまた禊を伴い、初日は大いに時間をかけて広場を回った。
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