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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第7章 兆し
 「……花って、何でもいいのかなあ。正しいとか間違いとか、別にないよね?」
「正直、禊である私には分かりかねますが……今までお仕え申し上げてきた巫女は皆、御自身の感覚だけでお選びになっていたように思います。同じ神をお想いになっても、巫女によって摘む花が異なる場合もございました。ですので……花を選ぶというより、自らの想いを託すに易い依代(よりしろ)を選ぶのだとお考えになった方がよろしいかと存じます。少なくとも……貴女様がお想いになる神々は、その花の見栄えで人の想いを選り分けることはなさらないかと」
「そっか……うん、そうだね」
その禊の言葉に神依は肩の力を抜き、改めて広場を見回し自身が知る神様に似合いそうな花を探していく。
 季節が混ざった広場はそれでもやはり、夏の草花が多かったが──。
「──あ。これ」
「椿ですね。……猿彦様に?」
「やっぱりそう思うでしょ? 花は真っ赤で葉っぱは濃い緑。ぴったり」
そんな言葉を密やかに交わし、まずは一つ赤い花。そしてあの蛟のために月の中に見た花藻を川から摘み、
(……日嗣様)
日嗣には花ではない──それよりも、もっとすらりと高く伸びるもの。色にも香にも媚びず、手折り難いもの──。
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