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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第7章 兆し
 もしその時が来たら、何を語られるか……怖い。自分がこの場所にいていいのか、分からないのが怖い。近付いてしまったことが……嬉しくて、同じくらい怖い。
 それでも──
「……でもやっぱり日嗣様は、猿彦さんが言った通り……最初から、優しかったんだと思います。……禊と一緒で、下手っぴだけど……」
「……いちいち他の者の名を出して代弁させるな。それから禊のくだりは、……男として、割りと癪に障る言われ方だ」
「……」
機嫌を損ねたように立ち上がる日嗣に、神依は困ったような笑みを浮かべそれに倣う。もう、帰らなければならない時間だ。
 静かな空気にとっくに飽きていた子龍は傘を真ん丸にしようと悪戦苦闘していたが、それに気付くと神依に駆け寄って拾い上げてもらえるのを待った。
 「……送っていく」
「あ……もし良ければなんですけど。ついでに、晩ご飯食べていきませんか? きっとみんな──日嗣様も、びっくりすると思います」
「……お前は一体、何をやらかしているんだ……」
言いながら傘を開けば、子龍が嬉しそうにそれを見上げる。それを見て、神依はにこりと笑った。
「……御霊祭、上手くいくといいですね」
「……ああ。きっと良い神が成る」
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