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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第7章 兆し
「──日嗣様」
「……あんなざまを見せて、今更取り繕う方が滑稽だろう。俺はもう、正直疲れた……」
「……」
「……お前が何故俺を拒んだか、察しは付いている。それをどこまで知られているのか──いや、既に全て知って隣に座してくれているなら、どれだけ気が楽になるかしれない」
「……奥さんが……いるってことですか……?」
「……それしか知らぬのなら、今はまだ聞いて欲しくない。これ以上ここで……浅ましい姿を晒したくはない。欠片ほどの誇りでも……残さなければ、俺の今までの時間も虚勢も、全て無益なものに思えてしまう。……契りを交わした女神にも、顔向けできない」
「……」
「その代わり……お前が問い、俺が話せる時が来たら、話す。勿論それは自己満足で……お前がどう思うかは分からない。けれどそれをしなければ、結局俺はいつまで経っても中途半端なままだ。……」
「私……、……私は、どうすれば……いいですか?」
「……どうもしなくていい。今のままでいい……。……いや、とりあえず、俺に謝る必要はもう無い。……今まで、にべもない態度を取ってすまなかった」
「……いえ」
 今度は日嗣の方からされた謝罪に、神依は微かに笑む。
 心から笑えないのは……まだ不安があるからだ。
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