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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
【1】
ついにやって来たその日。
御霊祭の朝は、いつにも増して早かった。
「──儂らもつつがなく儀が終わるよう、天の神々に祈っておる。そしてまた、美味いものを美味いよう食える時をな」
「どうぞお気をつけて。あなた方三人の努力は必ずや大輪の花となって開き、その先に実を結びましょう」
「鼠軼様、鼠英様──ありがとうございます。行って参ります」
神依は禊と童と共に屋敷神に挨拶を済ませ、まだ暗い内から八尋の大社の方へ向かう。
提灯の灯に照らされる、白い靄と水気を帯びた世界。霧雨。
進貢の広場まで行くと、朱の楼閣から地上まで煌々と灯がともされ、やはり男達がその準備に充てられていた。一方神依を含めた巫女達は、奥社の一角に与えられた控えの間で髪や衣の準備をし、幾つかの神事を終えた後にこちらへ向かうようになっている。
準備の間はさすがに巫女らも神依を構っている暇は無いようで、各々慌ただしく動いていた。またどの巫女の禊達も手落ちが無いよう、気を張っているようだった。
「──神依様、これ」
「なあに?」
そんな中、満面の笑みで童が神依に小さな箱を差し出してきた。神依は禊に髪をとかされながらそれを受け取る。
ついにやって来たその日。
御霊祭の朝は、いつにも増して早かった。
「──儂らもつつがなく儀が終わるよう、天の神々に祈っておる。そしてまた、美味いものを美味いよう食える時をな」
「どうぞお気をつけて。あなた方三人の努力は必ずや大輪の花となって開き、その先に実を結びましょう」
「鼠軼様、鼠英様──ありがとうございます。行って参ります」
神依は禊と童と共に屋敷神に挨拶を済ませ、まだ暗い内から八尋の大社の方へ向かう。
提灯の灯に照らされる、白い靄と水気を帯びた世界。霧雨。
進貢の広場まで行くと、朱の楼閣から地上まで煌々と灯がともされ、やはり男達がその準備に充てられていた。一方神依を含めた巫女達は、奥社の一角に与えられた控えの間で髪や衣の準備をし、幾つかの神事を終えた後にこちらへ向かうようになっている。
準備の間はさすがに巫女らも神依を構っている暇は無いようで、各々慌ただしく動いていた。またどの巫女の禊達も手落ちが無いよう、気を張っているようだった。
「──神依様、これ」
「なあに?」
そんな中、満面の笑みで童が神依に小さな箱を差し出してきた。神依は禊に髪をとかされながらそれを受け取る。