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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第8章 神として
「……」
そして傍らに在った童もまたそれを悟り、膝を折ると地に額を擦り付けた。
 禊は数秒、悩み、逡巡し……そして助けを求めるように、かつての主と兄貴分を見遣る。
 しかし彼らは呆けたように広場を眺め、神や巫女を……禊を見て、固まってしまっていた。もう、答えを与えてくれはしなかった。
 そして依るべき存在を神々にのみ見出だした禊は、何かに取り憑かれたように、ようやく……ゆっくりと地に座し、頭を垂れる。
 それから、最初は囁くように……途中からは何かを誇るように。
「……掛けまくも畏き……斎水別神(ユツミワケノカミ)と称え奉る──」
覡さえ目を見張るような透き通る声で、神詞を謳った。
 原初の神々を讃え、その血を引く天津神を讃え、国津神を讃え、その頂に立つ日嗣を讃え……その神に祭り上げられた龍神の偉大さを讃え、淡島の揺るぎなき水の護りとなることを乞い、数多の貢物を以て奉ることを誓い、結ぶ。
 ……それはまた、舞巫女達がそうであったように。
 主となる巫女のために決して妥協を許さず、こつこつと学び……痛みを帯びる程に厳しく己を律してきた禊だからこそ、成し得たことだった。
 報われなくとも──何にならなくとも。
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