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月光の誘惑《番外編》
第1章 月下の桜(一)

なのに、俺は。
なんで、こういうことを、しているんだろうな。
ジャケットに隠しておいた月と星のストラップをあかりさんのスマートフォンにつけ、シャラリと揺れる三日月を見る。うん、似合う。
なんで、こんなこと、しているんだろうな。本当に。
熱いシャワーを浴びるために、浴室へ向かう。さすがに冬の朝の浴室はヒヤリと寒い。
昨夜の泡風呂はいつの間にかなくなり、浴室の底には水が張られている。最初は湯だったのだろう。
浴室の扉が開いていたのは、加湿のためだったのか。
今日、あかりさんと何をしよう。熱いシャワーを浴びながら、思案する。
とりあえず、あのダサいダウンジャケットより暖かいコートかジャケットを買ってあげよう。アンゴラのコートとか、暖かいと思うけど。
服も買ってあげたい。スーツだって、あんまりいいやつじゃない。服にあまりお金をかけない様子だから、私服だってそうなのだろう。
まさか、稼いだ給料はすべてホテル代に消えているわけではないだろうな? ……ありえそうなところが怖い。
由加には「買わされて」いたものを、自主的に「買ってあげたい」と思っている心境の変化に、俺が一番驚いている。
ほんと、何なんだ、これは。
「しょーごくん」
体を洗っている最中に背後から抱きつかれ、驚いて、シャワーをあかりさんの頭上からかけてしまう。
「ひゃー!」
「わっ、あかり、ごめん!」
「いいよ、気にしないで。ふふ、ぶっかけられちゃった」
そこは怒ってもいいところなのに、あかりさんは気にしない様子でシャワーヘッドを奪って、俺の泡を洗い流してくれる。

