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月光の誘惑《番外編》
第2章 月下の桜(二)
「桜井くんは、それでいいの?」
「いいよ、別に。杉田も下手に俺を庇ったりすんなよ? 俺のことなら気にすんな」
「……バカなんだから」
バカ、か。バカなんだろうな。
去っていく杉田の後ろ姿を見送りながら、溜め息を吐く。白い息は、すぐに空気に溶けて消えていく。
でも、杉田。お前もかなりのバカだよ。女を取っ替え引っ替えして遊んでいた俺を好きになってくれるような女は、みんなバカなんだ。
好きになるな、とは言わないけど、ちゃんと相手を見ろよ、とは言いたい。
お前が惚れた男は、噂通り、最悪な男なんだ。
それは、今も、杉田からの告白を断ったときも、変わらない。
ヴヴとバイブが鳴る。見ると、見知らぬメアドから空メール、いや、画像だけ送られてきていた。今どきメールかよ、と毒づきながら添付されていた画像を開いて、愕然とする。
――なん、だ、これ。
送られてきた写真は二枚、先日、あかりと会ったときの写真だ。
レストランで食事をしている写真と、ラブホテルへ入っていくときの写真。尾行られて、二人一緒の姿を撮られたようだ。
幸い、あかりの顔にはスタンプか何かで加工がされていて誰なのかわからないようになってはいるけど、これはあまりに悪質だ。
気は進まないが、由加に話をしなければならない。
こういうことが続くのであれば、俺も黙ってはいられない。あかりに危害が加えられる前に、決着をつけなければならない。
本当に、俺は、バカだな。