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月光の誘惑《番外編》
第2章 月下の桜(二)
「私と行く予定だったホテル、カノジョと行くんでしょ? 楽しんできてね。私はクリスマスはカレシと北海道旅行だから」
「……良かったな」
「ほんとにね! 翔吾と別れていいコトばっかり!」
私幸せなの、と笑う元カノを見て、そのまま幸せになってくれと願う。
俺では与えられない、与えられなかった幸せだから。
「で、俺の変な噂、由加が流しているわけじゃないんだよな?」
「あぁ、あれ? 私じゃないよ。そりゃ、別れたときは友達に散々愚痴ったけど、今は全然! ほら、幸せだし?」
「心当たり、ある?」
「私より翔吾のほうが心当たりあるんじゃないの?」
うーん、と唸る。
由加だと思っていたから、由加以外の心当たりがない。その前の元カノは大学生ではなかったし、その前は高校生だった。大学内で付き合った人は、実は多くない。
「あ、でも、翔吾と付き合い始めて後期に入った頃、私にも変な噂立てられたよ? ビッチだとか、誰とでも寝る女だとか」
「むしろ由加は身持ちが堅いほうだろ」
「そうなんだけど、夏はもっと髪が明るかったから、そういうふうに見られていたのかもね。ま、別にいいけど」
由加も妙な噂を立てられていたというのは気になる。
俺と付き合った女に変な噂が立つのなら、それはたぶん――。
「私への嫉妬だろうね、って友達は言っていたよ。翔吾を好きな女が流した噂なんじゃないかって」
「だろうな。心当たりは全くないけど」
「告白したくてもできない子じゃない?」
カフェラテを飲み干して、由加はじいっと俺を見る。探るような視線は居心地が悪い。