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月光の誘惑《番外編》
第2章 月下の桜(二)
「今日の合コン、参加してくれ!」と洋介に懇願されたのは、金曜日の朝イチだった。今にも泣き出しそうな親友の顔を見て、朝からげんなりする。
「だから、合コンはもういいって」
「頼む、頼むよ、翔吾! 一生のお願い!」
「お前の一生のお願いはもう聞き飽きた」
中間試験に期末試験、進学してからの前期後期試験、イベントがあるたびに繰り返される「一生のお願い」で、洋介は何回一生を終えたのかわからない。二十回くらいは死んでいると思う。
「男子の数が足りなくて! 俺の好きな子が来てくれるから、絶対成功させたいんだよ! 頼むよ、親友!」
「洋介、好きな女がいたのかよ」
「当たり前じゃねえか! これでも男だぞ! 何年も片想いしてきたんだよ、頼むよ、翔吾!」
今日はあかりには会わないし、予定もない。溜め息をつきながら参加を了承したが、チェーン店の居酒屋で始まったのは、合コンというより同窓会だった。
誠南学園の卒業生しかいなかったのだ。
「歩くエロ、結婚したらしいよ!」
「マジか! 相手、先生?」
「それが、警察庁の人だって!」
「何だよ、エリートじゃねえか」
「バカねー、警察庁はキャリアって言うんだよ」
同窓会となると、学園の噂話で持ちきりになるのは当たり前だ。弟や妹が学園にいる同級生から新しい情報がもたらされるのを、俺も興味深く聞いている。
四対四の合コンも、すぐに打ち解けて昔話に花が咲く。
「しのちゃんは結婚しないのかな?」
「あー、俺しのちゃん好きだったなぁ」
「俺も、俺も」
「桜井くんもだよね?」
目の前に座った杉田に話を振られて、飲んでいたビールを吹きそうになる。杉田の顔は赤い。飲んでいるのは赤いカクテル。だいぶ酔っているな、これは。