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月光の誘惑《番外編》
第2章 月下の桜(二)
「好き」
「……杉田、ごめん」
「好きなの」
「ごめん」
俺は謝ってばかりだ。別れた女にも、告白してきた女にも。
こんな俺が嫌になる。
「……抱いてよ」
「杉田?」
「あの人みたいに、抱いてよ!」
「なに、言っ」
「なんで、ずっとずっと桜井くんのことが好きな私じゃダメで、出会ったばかりのあの人がいいの?」
あの人、は、由加のことじゃない。
――由加への嫉妬。
――俺を好きな女。
――告白したくてもできない子。
なあ、杉田。お前、まさか。
「なんで、あの人が、桜井くんに抱いてもらえるの? 私のほうが、ずっとずっと好きなのに! 桜井くんを想う気持ちは、絶対、負けないのに!」
……そうだろうな。それは同意できる。あかりは俺のことなんてこれっぽっちも好きじゃない。その点に関しては、杉田の勝ちだ。圧勝だ。間違いない。
でも。
俺の気持ちは――。
「桜井くんのバカっ!」
前も見ずに、杉田が駆け出した。一瞬のことで、俺の反応が遅れた。
「すぎ――!?」