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月光の誘惑《番外編》
第2章 月下の桜(二)
週明けには、洋介が満面の笑みで「杉田と付き合うことになった!」と報告してきた。
誠心誠意、口説き落としたらしい。そして、その末「友達からなら」という言葉を引き出して、長い長い片想いに終止符を打ったようだ。
……友達とすら思われていなかったのか? それは付き合うってことなのか? という無粋なツッコミはやめておいて、ただ「良かったな」とだけリアクションしておいた。
洋介が幸せそうで何よりだ。
杉田と洋介はうまくいくような気がしている。想われているほうが楽だと、杉田が早く気づいてくれるといいんだけど。
想うのはしんどい。
どんなに体を重ねても、愛の言葉を囁いても、それに応じてはくれない罪な女。
でも、想わずにはいられない。
願わずにはいられない。
「翔吾くん」
ホテルのロビーで待ち合わせ。
真っ黒なアンゴラのコートの裾から、ワンピースのオレンジ色が見え隠れする。プレゼントしたものをおとなしく着てきてくれたようだ。
髪は少しアップにして、オレンジ色の髪飾りでまとめてある。頭の怪我はもう大丈夫のようだ。
オレンジ色はクリスマスカラーではないけれど、あかりによく似合う色だ。
「こんばんは、あかり」
「着替えていたら遅れちゃった。待った?」
「今来たところだよ」
一時間前からここにいたのに、くだらない嘘をつく。あかりは俺を見上げて、微笑む。
「翔吾くん、スーツ着ると王子様みたいだね」
「じゃあ、あかりはお姫様かな?」
「……ごめんね、それはちょっと、恥ずかしい……言葉を間違えたね」
「わかってるよ。カッコいい、ってことでしょ?」
「うん、そう、カッコいい」