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月光の誘惑《番外編》
第2章 月下の桜(二)
あかりと腕を組んで、ホテルの階上にあるレストランへ向かう。夜景が見られるフレンチだけど、きっとあかりは夜景なんか気にせず、料理をちょっとずつ美味しそうに食べるんだろうなと想像して、俺は笑う。
「翔吾くん、いいことあった?」
「クリスマスイブに好きな人と過ごせる、っていういいことがあった」
あかりは「良かったね」と笑う。
あかりのことだって、わかってる?
「私もね、いいことがあったんだよ」
「へぇ、何?」
美味しいケーキを食べたとか、美味しい和菓子をもらったとか、そういうことかな、と想像する。あかりの「いいこと」はお手軽なものだ。
エレベーターが音もなくどんどん上がっていく。密室には二人きり。
でも、キスはさせてもらえなかった。部屋まで我慢、我慢。
「今日、仕事終わりだったんだ」
「へぇ……え、終わり?」
「引き継ぎも滞りなく、すませたよ」
「……じゃあ」
あかりの笑顔に隠された意味に、ようやく気づく。
「クリスマスは仕事」と言っていたけど、何時間かしか一緒にいられないと思っていたけど。
まさか、そんな、まさか。
「明日は……?」
「お休み。明後日もお休み。来年の五日までゆっくりできるよ」
人生初、セフレと過ごす年末年始。時間を気にせず、あかりの体を堪能できる、甘い甘い蜜月。
「……勃った」
「翔吾くん、隠して! 着くよ!」
サンタクロース、ありがとう。
これこそ、最高のクリスマスプレゼントだ。