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月光の誘惑《番外編》
第1章 月下の桜(一)

指差された箇所を見ると、契約の内容やオプションが書かれている。
一つ一つ、彼女に状況を尋ねながら、最適なものだけにチェックを入れていく。俺よりも月額は少ないのに、「高いんだなぁ」と彼女が呟く。
……機種変更代とアクセサリー代は、さっきストラップ代を会計したついでに、もうクレジットカードで支払っている。鈍感な彼女は、気づいていないようだけど。
そして、データの移行も終わって新しいスマートフォンを手に入れた彼女は、ほくほくとした顔で俺の待つテーブルへやって来た。
「桜井さん、ありがとうございました! 大変助かりました!」
「使い方、わかる?」
「……それが、まったく」
「じゃあ、俺の知っている料理屋に行かない? 充電もできるし、無料Wi−Fiもあるから」
「でも、そこまでお世話になるわけには」
世話をしたいんだ。
君のことを、もっと知りたいんだ。
困ったような表情の彼女に、下心を隠して精一杯の笑顔で微笑む。
「他に予定があった? 割り勘でいい?」
「あ、割り勘なら行きます。予定はないので」
警戒心というものがないのか、彼女はすんなり了承した。
ほんと、俺を信用しすぎ。
クリスマスの前に、プレゼントとは、サンタクロースも粋なことをしてくれる。
俺はもう、彼女をどうやって「彼女」にするかということしか、考えていなかった。

