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月光の誘惑《番外編》
第2章 月下の桜(二)

「ジャグジー、いいねぇ! スーパー銭湯みたいで」

 真っ白なバスローブ姿で現れたあかりは、クイーンサイズのベッドにダイブした。
 髪はまだ乾かしていないのか、半乾きなのか、水滴がついている。

 先にシャワールームから出てきた俺は、ソファに座ったままスマートフォンからメッセージを一通送る。
 ヴヴとサイドテーブルに置いてあるあかりのスマートフォンが揺れた。

「んー? 誰からだろ?」

 ベッドの上をのそのそと這いながら、あかりはスマートフォンを取る。そして、違和感にようやく気づく。

「……あれ? これ、翔吾くんの、じゃ、ない? 私の?」
「メリークリスマス」
「わぁ、かわいい!」

 あかりのスマートフォンに取り付けたのは、ぴったりのスマホカバーだ。背面にプリントがしてある透明なタイプのもの。

「桜に、三日月……かわいい。綺麗」

 下部に桜の木が描かれ、上部に三日月が浮かぶ。赤いスマートフォンが、夕焼けの景色を描く。

 桜と月は、俺とあかり。

 歴代の彼女にあげたものの中ではかなりチープなクリスマスプレゼント。なのに、あかりは目を細めて喜んでいる。
 ……その無邪気な笑顔を、見たかったんだ。

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