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月光の誘惑《番外編》
第2章 月下の桜(二)

「プレゼント、ありがと、翔吾」
「うん。あかりからは?」
「……んう」

 スマートフォンのメッセージ画面に表示された文字。それを読み上げるだけでいい。
 俺から、あかりにねだることは一つ。

「嘘をついて、俺を騙してよ」
「クリスマス、だから?」
「クリスマスだから」

 真っ赤なあかりは一瞬だけ視線をさまよわせて、唇をきゅっと結んだ。
 わかっている。
 あまり口にしない言葉だって。
 だから、今日、今夜だけでいい。

 ――俺を、騙して。

「ほ、本当に言うの?」
「言って」
「……一回しか言わないよ?」
「ダメ。俺の誕生日にも言って。年に二回でいいから」

 年に二回の嘘でいい。
 俺に、夢を見させて。
 ねぇ、かわいいサンタクロース。
 また一年、イイコにしているから。

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