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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第4章 エッフェル塔の恋人
雪はデッキにも降り注ぐ。
ダルタニアン元帥の横顔に一瞬、繊細で気弱な少年ファビアンが透けて見えた。
「…初恋は実らないものだ。…だから美しく心の中に残るのかもしれない。
…私も幸せな結婚をした。リーズほど美人ではなかったが、明るく可愛い女性だった。…残念ながら5年前に神の御元に旅立ってしまったがね。…子供は4人、孫は7人もいる。皆、良い子ばかりだ…私は幸せな老人だ。リーズとのことは今ではただの笑い話だよ。私とリーズは今や大親友だ」
「…元帥…」
ふっとダルタニアン元帥は優しく笑って縣を見た。
「…君は愛する人を追って日本に帰るのだとか?」
縣は表情を引き締めて頷く。
「はい。私の誰よりも大切な人です。…愚かなことに私はそのことになかなか気づけないでおりました」

元帥は柔らかく、縣の肩に手を置いた。
「間に合うよう祈っているよ。…時は無情にすぎてゆく…。取り返すことは神でもできないからな…」
マダムロッシュフォールと同じことを元帥は口にした。
そして、本来の泣く子も黙るいかめしい猛禽類の眼差しに戻り、背筋を伸ばした。
「…ムッシューアガタ。君を我が軍艦で責任を持って、日本までお送りしよう。…世界で一番早い船だ。君が無事に恋人と再会できたら、私の手柄にしてリーズに伝えるよ」
そう言ってフランスきっての名元帥、ファビアン・ド・ダルタニアンは再びにやりと笑ってみせたのだった。
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