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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第4章 エッフェル塔の恋人
…舞踏室の中央で二人は踊る。
美しいこの屋敷の令嬢 マドモアゼルリーズ、そして彼女より小柄な蚊トンボのように痩せた栗毛の少年…

「…僕と踊ったら笑われない?…マドモアゼルリーズ」
ファビアンは切なげに呟く。
「あら、どうして?」
「…だって僕はチビだし、身体も弱いし…言葉も上手く話せない…」
ファビアンは俯く。
マドモアゼルリーズはファビアンの手を強く握り、優しくリードする。
「笑いたい人には笑わせておけばいいわ。…ねえ、ファビアン、貴方は私と話す時、ちっとも吃らないわよ」
「…それは…リーズだから…」
「それに貴方の声はとっても綺麗よ」
ファビアンへ驚く。
「…僕の声が綺麗…?」
「ええ、そうよ。貴方の声はまるで綺麗な音楽みたい。私、貴方の声が大好き。…ねえ、貴方の声をもっと聴かせて?」
「…リーズ…」
マドモアゼルリーズは天使のように微笑んだ。
「それに貴方は、スポーツは苦手だけれど射撃とフェンシングはとても強いわ。お父様が褒めていらしたもの。ファビアンの腕なら強い軍人になれるだろう…て」
「…軍人か…」
リーズはファビアンの気持ちを引き立てるように、手を引き、くるくる回った。
「美しい声にフェンシングに射撃…!貴方、3つも良いところがあるのよ。しょげているなんてもったいないわ…!」
「…リーズ…あの…ありがとう…」
おずおずとお礼を言うと、リーズは花が開くように笑った。

ファビアンは願う…。
神様、このワルツがいつまでも終わりませんように…
ずっとずっとリーズと踊り続けられますように…と。

「…それから私は、海軍士官学校に入学をした。吃音は聖歌隊に入り声楽を習うと、自分でも気にならないほどに軽減した。士官学校は厳しかった。…だが、いつもリーズが褒めてくれたことをお守りのように唱えながら歯を食いしばって訓練を続けた。…無我夢中だった。…いつか立派な将校になって、リーズとまたワルツを踊りたい…その一心だった。…フフ…あの頃の少年なんて可愛いものだ」
「…元帥…」
元帥は遠くを見つめた。
…もう港は見えない。

「…何年も艦隊で過ごした。大戦も経験した。私は目標の将校に昇格した。…喜び勇んでリーズの屋敷を訪れると…その日は…リーズとロッシュフォール公爵との結婚式だった…。
…パリで買った真紅の薔薇の花束はポンデザール橋の上からセーヌ川の水面に投げ捨てた…」

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