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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 聖夜の恋人
静かに泣きながら新聞とポストカードを胸に抱きしめる光からはまだフロレアンへの色濃い愛が感じられた。
その姿はあまりにも切なく…そしてたとえようもなく美しかった。
…やはり、光さんはまだフロレアンのことを…。
フロレアンへの嫉妬で胸の奥が熱くなる。
そして、自分がこれから光に告白しようとしていることは余りに見当違いなことなのではないかという不安に駆られる。
…だから…
「…フロレアンはアンリエットさんとは結婚しないそうだ」
光を試すかのように賽を投げてしまう。
光はゆっくりと縣を見上げる。
「…一人で画家として、一から始めたいそうだ…君に感謝していると言っていたよ」
涙を拭いながら、小さく呟く。
「…そう…」
光はポストカードを大切そうに眺める。
…かつて二人が愛しあった日々が、確かにそこにはある…
縣が知る由も無い…縣の知らない光が…
訳のわからない理不尽な焦燥感が縣を支配する。
「…良かったじゃないか。彼は今、一人だ」
「…え?」
光は不審そうに眉を寄せる。
縣は唇を歪め、月城がテーブルに用意していったブランデーをわざと荒い動作でバカラのグラスに注ぐ。
「フロレアンは君が望んだ通り、一流画家への一歩を踏み出した。恐らく彼の絵は売れ、これから人気作家になることだろう。…考え直してみてもいいんじゃないか?」
ブランデーを一気に呷る。
「…どういう意味?」
「彼とよりを戻してみたらどうかということさ。…アンリエットさんとは結婚する意思はないそうだし…君と彼との障害は一切なくなったのだから」
…本当はこんなことを言いたい訳じゃない。
そうじゃない…私が言いたいのは…。
「…私はもうフロレアンとやり直す気はないわ」
ゆっくりと光が答える。
縣は光を見つめた。
そしてその言葉の真意を確かめようとした時、思いもよらぬ言葉が光の唇から漏れた。
「…フロレアンとはもう終わったの。彼が画家としての第一歩を歩みだしたことを知ることが出来て、ようやく踏ん切りがついたわ。
…私の恋はこれでおしまい。
…縣さん、私…お見合いをすることにしたの」
思わず、グラスを取り落としそうになる。
「見合い…?」
光は感情の篭らない声で淡々と告げる。
「…ええ、そう。母の為に…麻宮家の為に…お見合いをして結婚するわ…。それが母を一番安心させる選択であり、麻宮家の跡取りの私の使命なのよ」
その姿はあまりにも切なく…そしてたとえようもなく美しかった。
…やはり、光さんはまだフロレアンのことを…。
フロレアンへの嫉妬で胸の奥が熱くなる。
そして、自分がこれから光に告白しようとしていることは余りに見当違いなことなのではないかという不安に駆られる。
…だから…
「…フロレアンはアンリエットさんとは結婚しないそうだ」
光を試すかのように賽を投げてしまう。
光はゆっくりと縣を見上げる。
「…一人で画家として、一から始めたいそうだ…君に感謝していると言っていたよ」
涙を拭いながら、小さく呟く。
「…そう…」
光はポストカードを大切そうに眺める。
…かつて二人が愛しあった日々が、確かにそこにはある…
縣が知る由も無い…縣の知らない光が…
訳のわからない理不尽な焦燥感が縣を支配する。
「…良かったじゃないか。彼は今、一人だ」
「…え?」
光は不審そうに眉を寄せる。
縣は唇を歪め、月城がテーブルに用意していったブランデーをわざと荒い動作でバカラのグラスに注ぐ。
「フロレアンは君が望んだ通り、一流画家への一歩を踏み出した。恐らく彼の絵は売れ、これから人気作家になることだろう。…考え直してみてもいいんじゃないか?」
ブランデーを一気に呷る。
「…どういう意味?」
「彼とよりを戻してみたらどうかということさ。…アンリエットさんとは結婚する意思はないそうだし…君と彼との障害は一切なくなったのだから」
…本当はこんなことを言いたい訳じゃない。
そうじゃない…私が言いたいのは…。
「…私はもうフロレアンとやり直す気はないわ」
ゆっくりと光が答える。
縣は光を見つめた。
そしてその言葉の真意を確かめようとした時、思いもよらぬ言葉が光の唇から漏れた。
「…フロレアンとはもう終わったの。彼が画家としての第一歩を歩みだしたことを知ることが出来て、ようやく踏ん切りがついたわ。
…私の恋はこれでおしまい。
…縣さん、私…お見合いをすることにしたの」
思わず、グラスを取り落としそうになる。
「見合い…?」
光は感情の篭らない声で淡々と告げる。
「…ええ、そう。母の為に…麻宮家の為に…お見合いをして結婚するわ…。それが母を一番安心させる選択であり、麻宮家の跡取りの私の使命なのよ」