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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 聖夜の恋人
縣は眼差しを豹変させると、生田に慌ただしく告げながら玄関に向かい歩き出す。
「出掛ける。私が運転するから伴はよい」
生田が慌てて追いすがる。
「旦那様…!お召替えはなさらないのですか?」
縣はキャメル色のカシミヤのセーターに濃灰色のツイードのスラックス姿だ。
上質な仕立ての良い衣服だが、外出する恰好ではない。身嗜みに拘る縣がこのような普段着で出掛けることは、未だかつてなかった。
執事の生田は驚きを隠せなかった。
「いい。このままで行く」
縣はそう言い捨て、足早に歩き出す。
「兄さん…!」
背中に暁の切羽詰まった声が聞こえた。
振り返ると、暁が親に取り残される子供のような必死な眼差しをしていた。
縣は、子供の頃の暁に語りかけるように優しく笑った。
「…すまない、暁。飾り付けは帰ってからだ。いい子で待っていてくれ」
そして、隣に佇む月城に視線を移す。
「…月城、君の友情には心から感謝する。ありがとう」
1人の友として頭を下げる。
月城はゆっくり瞬きし、首を振る。
「とんでもございません。…私は縣様に、長年良くしていただきました。貴方様にはお幸せになっていただきたいだけです」
縣は月城を見つめる眼差しに万感の思いを込め、力強く頷くとそのまま風のように玄関を出て行った。
ほどなくして、縣の愛車の二人乗りのフォードが疾風の如く走り去る音が聞こえ、それもすぐに遠ざかる。


「…兄さん…行っちゃった…」
暁が寂しさと恋しさを滲ませた声でぽつりと呟く。
月城はゆっくりと暁を見つめ、慈愛に満ちた声をかける。
「…暁様、クリスマスツリーの飾り付けをお手伝いいたしましょうか…?」
「…うん、ありがとう」
暁は美しい目尻に微かに光るものを白い指で払いながら、懸命に笑ってみせたのだった。
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