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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 聖夜の恋人
縣の運転するフォードは眼も止まらぬ速さで北白川家の門扉をくぐり抜け、車寄せに荒っぽく停まった。
車寄せには他に、メルセデス、ロールスロイスと高級外国車が黒光りしながら整然と並んでいる。
車の音を聞きつけた下僕長が、玄関から慌てて飛び出してくる。
車から降り、足早に玄関までの階段を上がる縣を認めると駆け寄り、遠慮勝ちに声をかけた。
「あ、縣様!あの、本日は…」
「お約束もなく伺って申し訳ないね。色々事情があるのだが、今は説明している暇がない。…光さんのお見合いのお部屋は何処だ?」
下僕長は一瞬、縣の勢いに飲まれてしまう。
「あ、はい…東翼の大広間です…」
「ありがとう」
さっさとホールを横切ろうとする縣を、下僕長は追いかける。
「お、お待ちください!大変申し訳ありませんが、本日のお見合いには他の方はどなたもお通ししてはならぬと麻宮侯爵様より堅く申し渡されているのです」
縣は人好きのする笑顔を下僕長に向け、
「承知しているよ。大丈夫、君に咎はいかないから」
と端的に答え、東翼への長い廊下を颯爽と歩き始めた。
美しくすらりとした、威厳すら感じられる後ろ姿に見惚れながらも、はっと我に返り下僕長は慌てて縣を追いかける。
「お待ちください!縣様!…い、今、月城さんが不在なのです。困ります…!」
「大丈夫。彼は先刻ご承知さ」
「は、はあ…?」
縣は重厚な絨毯を踏みしめながら拳を握り締め、鋭い眼差しで前を見据え、大広間への道を歩き続けた。
車寄せには他に、メルセデス、ロールスロイスと高級外国車が黒光りしながら整然と並んでいる。
車の音を聞きつけた下僕長が、玄関から慌てて飛び出してくる。
車から降り、足早に玄関までの階段を上がる縣を認めると駆け寄り、遠慮勝ちに声をかけた。
「あ、縣様!あの、本日は…」
「お約束もなく伺って申し訳ないね。色々事情があるのだが、今は説明している暇がない。…光さんのお見合いのお部屋は何処だ?」
下僕長は一瞬、縣の勢いに飲まれてしまう。
「あ、はい…東翼の大広間です…」
「ありがとう」
さっさとホールを横切ろうとする縣を、下僕長は追いかける。
「お、お待ちください!大変申し訳ありませんが、本日のお見合いには他の方はどなたもお通ししてはならぬと麻宮侯爵様より堅く申し渡されているのです」
縣は人好きのする笑顔を下僕長に向け、
「承知しているよ。大丈夫、君に咎はいかないから」
と端的に答え、東翼への長い廊下を颯爽と歩き始めた。
美しくすらりとした、威厳すら感じられる後ろ姿に見惚れながらも、はっと我に返り下僕長は慌てて縣を追いかける。
「お待ちください!縣様!…い、今、月城さんが不在なのです。困ります…!」
「大丈夫。彼は先刻ご承知さ」
「は、はあ…?」
縣は重厚な絨毯を踏みしめながら拳を握り締め、鋭い眼差しで前を見据え、大広間への道を歩き続けた。