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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 聖夜の恋人
縣は熱い眼差しで、光の顔を見つめる。
縣の大きな手が光の小さな美しい顔を包み込む。
そして、光の水晶のように輝く涙を優しく拭う。
「…光さん…愛している…何度も泣かせてしまい、すまなかった。…もう君に哀しみの涙を流させはしない」
「…縣さん…」
二人が再び、くちづけをしようと顔を近づけた時…
見合い相手の母親の金切声が響いた。
「麻宮様!こ、これはどういうことなのですか⁉︎貴方は結婚前に不純異性交遊するようなふしだらなお嬢様をわたくしの大切な息子に押し付けるおつもりだったのですかッ⁈」
麻宮侯爵が慌てふためく。
「い、いや…山科子爵夫人…私にもなにがなんだかさっぱり…」

縣と光は抱き合い、額を寄せたままクスクス笑う。
「…私達、もう札付きの悪ね…。社交界に顔を出せなくなるかもしれないわ」
「そうなったら、また二人でパリに行こう…」
縣は光の美しい額に愛しくてたまらないようにキスを落とす。
そして光の肩を抱きかかえると、二人の親に向かい優雅に胸に手を当てお辞儀をし、堂々と宣言する。
「…麻宮侯爵、お許しください。
かくなる上は私が責任を持って光さんをお引き受けいたします。
山科子爵夫人、並びにご子息様には本日の度重なるご無礼を心よりお詫び申し上げます。
…ですが、こちらの光さんは破天荒な上に天衣無縫…おそらく品行方正なご子息様には手に余るお相手になるかと存じます。…ですので、光さんは私が戴くことにいたします。
…ご子息様にいつか素晴らしい大和撫子のお嬢様とご縁がございますように、お祈り申し上げます。
…それでは、皆様ご機嫌よう」

そうして縣は光の手を大切に握り締め、足早に大広間を後にした。

取り残された人々は狐につままれたように唖然とするより他になかった。
翠1人が
「…なんてドラマチックなの…!縣様とお姉様…また駆け落ちなさるのかしら⁈ねえ?お父様」
と、興奮しながら麻宮侯爵に尋ねる。
「…黙りなさい、翠」
麻宮侯爵は溜息を吐きながら、グラスに注がれたワインを一気に飲み干したのだった。



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