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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第2章 ピガールの麗人
客席も暗くなり、気の早い客が歓声を上げる。
バンドマンが奏で始めたのはプッチーニの蝶々夫人だ。
あまり上手くない演奏が余計に淫靡さを誘う。
間も無く薄暗い舞台に一人の女性がゆっくりと登場した。
すらりと背の高い細身の女性のようだ。
照明が当たらないので薄ぼんやりとシルエットが見て取れるだけである。
「…一体、何が始まるんだ?」
縣はジュリアンに小声で尋ねた。
ジュリアンは含み笑いをしながら縣の耳元で囁いた。
「ヌードショーさ。しかもプロのダンサーではなく素人の女性らしい。ちょっと唆るだろう?」
縣は眉を顰める。
「…あまり良い趣味とは言えないな」
と答えた時、突然舞台に照明が当たり、女性の姿が露わになった。
…その女性の顔を見た瞬間、縣は思わず息を呑んだ。
「…光さん!」
顔色を変えた縣に気づいたジュリアンが舞台と縣を交互に見る。
「え?知り合い?」
舞台の女性は、真紅の肌襦袢をしどけなく身に纏い、桃色の婀娜めいた帯を締めている。
遊女のような姿だ。
ライトに照り映えるような肌は練絹のようにしっとりとした上質な白肌である。
形の良い三日月のような眉、濃い琥珀色の瞳、長く濃い睫毛、彫刻刀で繊細に刻んだような美しい鼻梁、珊瑚色のふっくらとした唇…。
間違いない。あの類い稀な美女は梨央の従姉妹、麻宮侯爵令嬢 光だ。
髪は肩より下に伸びて、男装姿の頃とは別人のように女性らしい姿だが、光に間違いなかった。
「光さん…なぜこんなところに…」
信じられないように独白する縣に、ジュリアンは焦れたように尋ねる。
「知り合いなのか?」
「…ああ。…梨央さんの従姉妹だ」
「ええ⁈なんだって⁈」
ジュリアンも目を丸くする。
ライトに照らされた女性が東洋人で…しかも余りに美貌だった為、場内の客から騒然とした歓声が上がった。
酔客からは興奮した掛け声と口笛が鳴り止まない。
人形のように無表情な光は真っ直ぐ前を向いていたが、やがて、ゆっくりと帯に手を伸ばし、するすると解き始めた。
「いいぞ!美人のマダムバタフライ!」
「早く見せてくれよ!綺麗な裸を!」
下品な野次が飛ぶ。
…光の手が襦袢の襟にかかった瞬間、縣は立ち上がり叫んでいた。
「止めるんだ!光さん!」
怒りに似た何かに突き動かされるように憤然と椅子を蹴散らし、舞台に向かう。
光が縣に気づき、驚愕の余り瞳を見開いた。
バンドマンが奏で始めたのはプッチーニの蝶々夫人だ。
あまり上手くない演奏が余計に淫靡さを誘う。
間も無く薄暗い舞台に一人の女性がゆっくりと登場した。
すらりと背の高い細身の女性のようだ。
照明が当たらないので薄ぼんやりとシルエットが見て取れるだけである。
「…一体、何が始まるんだ?」
縣はジュリアンに小声で尋ねた。
ジュリアンは含み笑いをしながら縣の耳元で囁いた。
「ヌードショーさ。しかもプロのダンサーではなく素人の女性らしい。ちょっと唆るだろう?」
縣は眉を顰める。
「…あまり良い趣味とは言えないな」
と答えた時、突然舞台に照明が当たり、女性の姿が露わになった。
…その女性の顔を見た瞬間、縣は思わず息を呑んだ。
「…光さん!」
顔色を変えた縣に気づいたジュリアンが舞台と縣を交互に見る。
「え?知り合い?」
舞台の女性は、真紅の肌襦袢をしどけなく身に纏い、桃色の婀娜めいた帯を締めている。
遊女のような姿だ。
ライトに照り映えるような肌は練絹のようにしっとりとした上質な白肌である。
形の良い三日月のような眉、濃い琥珀色の瞳、長く濃い睫毛、彫刻刀で繊細に刻んだような美しい鼻梁、珊瑚色のふっくらとした唇…。
間違いない。あの類い稀な美女は梨央の従姉妹、麻宮侯爵令嬢 光だ。
髪は肩より下に伸びて、男装姿の頃とは別人のように女性らしい姿だが、光に間違いなかった。
「光さん…なぜこんなところに…」
信じられないように独白する縣に、ジュリアンは焦れたように尋ねる。
「知り合いなのか?」
「…ああ。…梨央さんの従姉妹だ」
「ええ⁈なんだって⁈」
ジュリアンも目を丸くする。
ライトに照らされた女性が東洋人で…しかも余りに美貌だった為、場内の客から騒然とした歓声が上がった。
酔客からは興奮した掛け声と口笛が鳴り止まない。
人形のように無表情な光は真っ直ぐ前を向いていたが、やがて、ゆっくりと帯に手を伸ばし、するすると解き始めた。
「いいぞ!美人のマダムバタフライ!」
「早く見せてくれよ!綺麗な裸を!」
下品な野次が飛ぶ。
…光の手が襦袢の襟にかかった瞬間、縣は立ち上がり叫んでいた。
「止めるんだ!光さん!」
怒りに似た何かに突き動かされるように憤然と椅子を蹴散らし、舞台に向かう。
光が縣に気づき、驚愕の余り瞳を見開いた。