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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第2章 ピガールの麗人
縣は光を車の後部座席に押し込めると、素早く自分も乗りこんだ。
ジュリアンはエンジンを掛けるとアクセルを勢い良く踏み込み、目にも留まらぬ速さで車を発車させた。
この辺りは石畳みの状態が悪いので、ガタガタと車体が左右に激しく揺れる。
縣は車の衝撃から光を守るように無意識に、その華奢な身体を抱き締めていた。
暫くして、光が憮然としたように呟いた。
「…もう逃げないから…」
「え?」
「逃げないから手を緩めて。…痛いの」
縣は慌てて掴んでいた光の手首から手を離す。
白く華奢な手首にくっきりと赤く痕が付いていた。
「失礼。大丈夫か?」
光は返事の代わりにふて腐れたように、窓の外に顔を背けた。
「…どこに連れて行く気?」
真紅の肌襦袢から覗く肌が仄白く、ネオンを映す瞳は謎めいた琥珀色に濡れ、光の尋常ではない美貌を引き立たせていた。
縣は思わず光に見惚れながら、努めて冷静に答える。
「私は今、16区のジュリアンの別邸に間借りしているんだ。
そこで、ゆっくりと君の話を聞きたい。…なぜ、君があんな場末のキャバレーで淫らなショーに出ようとしていたのか…」
その言葉を聞くやいなや、肩まで伸びた黒髪がふわりと靡くほど勢い良く振り返る。
光は形の良い柳眉を跳ね上げ、くすりと笑った。
「…淫らなショー…ね。…はっきりヌードショーと言えばいいのに。相変わらずお上品な縣様。文句のつけようがない紳士だわ」
縣は小さく溜息を吐く。
「なぜ君はいつもそう好戦的なんだ。…私が嫌いなのは分かるけれど、もう少し穏やかな言い方ができないのか?」
光は華奢な肩を竦める。
「…私を嫌っているのは貴方でしょう?私が梨央さんを好きだった頃からずっと…。それだけじゃないわね、私は淑女じゃないし、奔放だし、我儘だし、生意気だし…こんな私に1000フランも払っちゃって…フフ…本当にお人好し!お金持ちが仇になったわね」
皮肉めいて笑う光に縣は何か言おうとしたが諦め、口を噤んだ。
その場の雰囲気を変えようと、ジュリアンが運転席から明るく口を挟む。
「アンヌはもう帰宅しているから良かったよね!…もしいたら、マドモアゼルの格好を見て卒倒してた」
…しかしそれは全く成功せず、車内の雰囲気は再び重く沈み込んだだけであった。
ジュリアンはエンジンを掛けるとアクセルを勢い良く踏み込み、目にも留まらぬ速さで車を発車させた。
この辺りは石畳みの状態が悪いので、ガタガタと車体が左右に激しく揺れる。
縣は車の衝撃から光を守るように無意識に、その華奢な身体を抱き締めていた。
暫くして、光が憮然としたように呟いた。
「…もう逃げないから…」
「え?」
「逃げないから手を緩めて。…痛いの」
縣は慌てて掴んでいた光の手首から手を離す。
白く華奢な手首にくっきりと赤く痕が付いていた。
「失礼。大丈夫か?」
光は返事の代わりにふて腐れたように、窓の外に顔を背けた。
「…どこに連れて行く気?」
真紅の肌襦袢から覗く肌が仄白く、ネオンを映す瞳は謎めいた琥珀色に濡れ、光の尋常ではない美貌を引き立たせていた。
縣は思わず光に見惚れながら、努めて冷静に答える。
「私は今、16区のジュリアンの別邸に間借りしているんだ。
そこで、ゆっくりと君の話を聞きたい。…なぜ、君があんな場末のキャバレーで淫らなショーに出ようとしていたのか…」
その言葉を聞くやいなや、肩まで伸びた黒髪がふわりと靡くほど勢い良く振り返る。
光は形の良い柳眉を跳ね上げ、くすりと笑った。
「…淫らなショー…ね。…はっきりヌードショーと言えばいいのに。相変わらずお上品な縣様。文句のつけようがない紳士だわ」
縣は小さく溜息を吐く。
「なぜ君はいつもそう好戦的なんだ。…私が嫌いなのは分かるけれど、もう少し穏やかな言い方ができないのか?」
光は華奢な肩を竦める。
「…私を嫌っているのは貴方でしょう?私が梨央さんを好きだった頃からずっと…。それだけじゃないわね、私は淑女じゃないし、奔放だし、我儘だし、生意気だし…こんな私に1000フランも払っちゃって…フフ…本当にお人好し!お金持ちが仇になったわね」
皮肉めいて笑う光に縣は何か言おうとしたが諦め、口を噤んだ。
その場の雰囲気を変えようと、ジュリアンが運転席から明るく口を挟む。
「アンヌはもう帰宅しているから良かったよね!…もしいたら、マドモアゼルの格好を見て卒倒してた」
…しかしそれは全く成功せず、車内の雰囲気は再び重く沈み込んだだけであった。