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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第2章 ピガールの麗人
騒ぎを聞きつけた店の支配人が血相を変えて、追いかけてきた。
「お、おい!何をやっているんだ!勝手に舞台から降ろしたりして!客は怒りまくって大騒ぎだ。どうしてくれるんだ!」
ビヤ樽のように肥った支配人は手を振り回して憤慨する。
縣は光を自分の背後に隠すと、流暢なフランス語で答えた。
「彼女は私の友人だ。何かの間違いでここに至ったらしいので、私が連れて帰るよ。騒ぎを起こしてすまなかった」
光が縣の背中を強く拳で叩く。
「余計なことをしないで!私は舞台を降りる訳にはいかないの!」
「ま、まあ落ち着いて、マドモアゼル…」
ジュリアンが慌てて光の肩を抑える。
ビヤ樽支配人は、人差し指を縣に突きつけ睨みつけた。
「聞いただろう?この娘は舞台に上がらなくてはならないんだ。私はこの娘に今夜のギャラとして大金を支払ったのだからな!舞台に穴を開けるなら、警察につきだすまでだ!」
縣は全く動揺せずに、冷静に尋ねた。
「いくらだ?」
「…へ?」
「彼女のギャラはいくらなんだ?」
ビヤ樽支配人はふて腐れたように答える。
「1000フランだ!1000フラン!こんな大金を払ったのにダンサーにトンズラされてたまるか!店の大損失…」
縣はワイシャツの内ポケットから小切手帳を取り出し、モンブランの万年筆ですらすらと金額を書き込む。
ビヤ樽支配人はどんぐり眼を更に丸くした。
さもないようにビヤ樽支配人に小切手を渡す。
「これを明日、フランス銀行に持ってゆけ。すぐに現金に替えてくれる。…もう行ってもいいだろう?」
「…あ、ああ…か、金さえ貰えたら文句はないけれどな…」
ビヤ樽支配人は信じられないように綺麗な筆跡で書かれた小切手と縣を何回も見て、やや悔しげに捨てゼリフを吐いた。
「ブルジョアな知り合いがいて助かったな。お嬢ちゃん。だが世間はそう甘くはないからな。これからは気をつけろよ!綺麗な顔と身体だけでなんとかなると思わないことだ」
憎々しげに嫌味を吐かれて、光は怒りを露わにする。
「余計なことをしないでよ!誰が貴方にお金を払ってと頼んだ⁈貴方にだけは同情されたくないわ!」
なおも暴れる光を身体ごと押さえつけ、縣は早口でジュリアンに告げる。
「ひとまず16区の君の家に…車を頼む」
「わ、分かった!さあこっちだ」
縣とジュリアンは抗う光を引き摺るようにして店の外へと連れ出した。
「お、おい!何をやっているんだ!勝手に舞台から降ろしたりして!客は怒りまくって大騒ぎだ。どうしてくれるんだ!」
ビヤ樽のように肥った支配人は手を振り回して憤慨する。
縣は光を自分の背後に隠すと、流暢なフランス語で答えた。
「彼女は私の友人だ。何かの間違いでここに至ったらしいので、私が連れて帰るよ。騒ぎを起こしてすまなかった」
光が縣の背中を強く拳で叩く。
「余計なことをしないで!私は舞台を降りる訳にはいかないの!」
「ま、まあ落ち着いて、マドモアゼル…」
ジュリアンが慌てて光の肩を抑える。
ビヤ樽支配人は、人差し指を縣に突きつけ睨みつけた。
「聞いただろう?この娘は舞台に上がらなくてはならないんだ。私はこの娘に今夜のギャラとして大金を支払ったのだからな!舞台に穴を開けるなら、警察につきだすまでだ!」
縣は全く動揺せずに、冷静に尋ねた。
「いくらだ?」
「…へ?」
「彼女のギャラはいくらなんだ?」
ビヤ樽支配人はふて腐れたように答える。
「1000フランだ!1000フラン!こんな大金を払ったのにダンサーにトンズラされてたまるか!店の大損失…」
縣はワイシャツの内ポケットから小切手帳を取り出し、モンブランの万年筆ですらすらと金額を書き込む。
ビヤ樽支配人はどんぐり眼を更に丸くした。
さもないようにビヤ樽支配人に小切手を渡す。
「これを明日、フランス銀行に持ってゆけ。すぐに現金に替えてくれる。…もう行ってもいいだろう?」
「…あ、ああ…か、金さえ貰えたら文句はないけれどな…」
ビヤ樽支配人は信じられないように綺麗な筆跡で書かれた小切手と縣を何回も見て、やや悔しげに捨てゼリフを吐いた。
「ブルジョアな知り合いがいて助かったな。お嬢ちゃん。だが世間はそう甘くはないからな。これからは気をつけろよ!綺麗な顔と身体だけでなんとかなると思わないことだ」
憎々しげに嫌味を吐かれて、光は怒りを露わにする。
「余計なことをしないでよ!誰が貴方にお金を払ってと頼んだ⁈貴方にだけは同情されたくないわ!」
なおも暴れる光を身体ごと押さえつけ、縣は早口でジュリアンに告げる。
「ひとまず16区の君の家に…車を頼む」
「わ、分かった!さあこっちだ」
縣とジュリアンは抗う光を引き摺るようにして店の外へと連れ出した。