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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第1章 ムーランルージュの夜
縣が北白川伯爵に梨央との婚約解消の旨を伝えたのは、昨年の冬…伯爵が大使を務めるロンドンの公邸であった。
マントルピースの火が赤々と燃え爆ぜる応接間で伯爵は一言も言葉を挟まず、縣の話を静かに聞いた。
「…伯爵のご期待にお応え出来ずに申し訳ありません。
梨央さんに非はございません。全ては私の至らなさが原因です。申し訳ございませんでした」
そう頭を下げる縣に、伯爵は穏やかに声をかけた。
「…君は相変わらず優しいね。梨央は幸せだ。君のような人にずっと護られ、愛されて…」
「…伯爵…」
顔を上げる縣に伯爵は白い上質な封筒を上げて見せた。
美しい筆跡…梨央の字だ。
「先日、梨央から届いたよ。…婚約解消はすべて自分の責任だと。君の責任ではないと書いてある」
縣は目を見張った。
「君はきっと自分を庇うだろうからと…。…君と梨央は深い信頼関係で結ばれていたのだな。
婚約解消は残念だが、私は君と梨央が美しい関係を保ち続けていることがとても嬉しい」
「…伯爵…」
伯爵はゆっくりと立ち上がり、縣に美しい手を差し出した。
「…今まで梨央を護ってくれてありがとう。君にはどれだけ感謝してもしたりない」
「…伯爵…。とんでもございません…。
…私は…梨央さんのご成長をずっとお側で拝見出来て幸せでした…」
…あの稀有な貴い儚げな美しい白薔薇を…ずっと傍らで見つめることが出来た。
これが幸せでなくてなんであろう。
「…礼也君…」
縣は差し出しされた手をしっかりと握る。
「私はこれからも梨央さんと…そしてお姉様の綾香さんを影ながらお護りいたします。お若くお美しいご姉妹お二人では何かと心細いこともおありでしょう。微力ながら、お力になりたいのです」
伯爵は握手した手に手を重ねた。
「…君は本当に素晴らしい青年だ。君の貴い志に心から感謝するよ。…ありがとう」
二人はそして旧知の友人のように温かく微笑みあったのだ。
マントルピースの火が赤々と燃え爆ぜる応接間で伯爵は一言も言葉を挟まず、縣の話を静かに聞いた。
「…伯爵のご期待にお応え出来ずに申し訳ありません。
梨央さんに非はございません。全ては私の至らなさが原因です。申し訳ございませんでした」
そう頭を下げる縣に、伯爵は穏やかに声をかけた。
「…君は相変わらず優しいね。梨央は幸せだ。君のような人にずっと護られ、愛されて…」
「…伯爵…」
顔を上げる縣に伯爵は白い上質な封筒を上げて見せた。
美しい筆跡…梨央の字だ。
「先日、梨央から届いたよ。…婚約解消はすべて自分の責任だと。君の責任ではないと書いてある」
縣は目を見張った。
「君はきっと自分を庇うだろうからと…。…君と梨央は深い信頼関係で結ばれていたのだな。
婚約解消は残念だが、私は君と梨央が美しい関係を保ち続けていることがとても嬉しい」
「…伯爵…」
伯爵はゆっくりと立ち上がり、縣に美しい手を差し出した。
「…今まで梨央を護ってくれてありがとう。君にはどれだけ感謝してもしたりない」
「…伯爵…。とんでもございません…。
…私は…梨央さんのご成長をずっとお側で拝見出来て幸せでした…」
…あの稀有な貴い儚げな美しい白薔薇を…ずっと傍らで見つめることが出来た。
これが幸せでなくてなんであろう。
「…礼也君…」
縣は差し出しされた手をしっかりと握る。
「私はこれからも梨央さんと…そしてお姉様の綾香さんを影ながらお護りいたします。お若くお美しいご姉妹お二人では何かと心細いこともおありでしょう。微力ながら、お力になりたいのです」
伯爵は握手した手に手を重ねた。
「…君は本当に素晴らしい青年だ。君の貴い志に心から感謝するよ。…ありがとう」
二人はそして旧知の友人のように温かく微笑みあったのだ。