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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第3章 16区の恋人
静かな時が流れる。
お茶を飲みながら、木々や、池や遠くの寺院を眺めるともなく眺める。
光と二人きりで、こんなにも気を遣わず、寛げる自分に縣は驚いていた。
暫くして光が口を開いた。
「ねえ、聞いてもいい?」
「うん?」
「…どうして恋人を作らないの?」
縣はカヌレを摘みながら笑う。
「君流に言うと、女性を見下しているから作らないんじゃなくて出来ないんだろうな」
「茶化さないでちゃんと答えて」
真剣な眼差しと目が合う。
「…まだ、梨央さんを忘れられないから?」
「…いや、そうじゃない」
縣は穏やかに微笑する。
「梨央さんのことはもう美しい想い出だ。彼女が幸せならそれでいい」
「…だったら…」
「恋をしたいような人に巡り会えないから…かな」
ぼんやりと頬杖をつく。
向かい側のベンチでは恋人たちがキスを交わしていた。
「梨央さんみたいに儚げな人?…日本にはたくさんいそうだけど…」
「…別に梨央さんみたいな人である必要はないんだが…私と梨央さんが出会ったのは彼女が6歳の時だし…。
誤解を恐れずに言えば、私は出会った瞬間から彼女に恋をしていた。…気がついたら恋の落とし穴に落ちていた。…そんな恋にまた再び巡り会えるとは到底思えない。だから諦めている。…もう恋はいいんだ」
少し怒ったように光が反論する。
「どうしてそんな風に決めつけるの?貴方はビジネスは大胆なのに恋には消極的すぎるわ」
縣は大人らしく優しく光に尋ねる。
「私に恋人がいないのが気になるの?」
「一般的な興味ですけどね」
ツンと顎を反らせるのが妙に可愛らしい。
…おかしいな…。光さんはこんなに可愛い人だったっけ?
「…数日だけど貴方と一緒に過ごして感じたの。貴方は上辺だけでなく優しいし、とても知的だし、男性らしいし、社交的だし…ハンサムだし」
縣はオーバーに天を仰ぐ。
「どうしたんだ?光さんが僕を褒めるなんて!いきなり雪が降りそうだ!」
「…貴方に相応しい人はきっとどこかにいるわ。だから恋を諦めないで」
思いがけずに優しい表情の光と目が合い、縣はどきりとする。
「…そうかな…」
「そうよ、必ずいるわ」
濃い琥珀色の瞳。吸い込まれそうな瞳だ…。
縣が口を開きかけた時…
「…私だって巡り会えたんですもの」
ああ…。
縣は言葉を飲み込み微笑む。
「そうだったね…」
そうだった。
…光さんには激しく愛し合う恋人がいる。
お茶を飲みながら、木々や、池や遠くの寺院を眺めるともなく眺める。
光と二人きりで、こんなにも気を遣わず、寛げる自分に縣は驚いていた。
暫くして光が口を開いた。
「ねえ、聞いてもいい?」
「うん?」
「…どうして恋人を作らないの?」
縣はカヌレを摘みながら笑う。
「君流に言うと、女性を見下しているから作らないんじゃなくて出来ないんだろうな」
「茶化さないでちゃんと答えて」
真剣な眼差しと目が合う。
「…まだ、梨央さんを忘れられないから?」
「…いや、そうじゃない」
縣は穏やかに微笑する。
「梨央さんのことはもう美しい想い出だ。彼女が幸せならそれでいい」
「…だったら…」
「恋をしたいような人に巡り会えないから…かな」
ぼんやりと頬杖をつく。
向かい側のベンチでは恋人たちがキスを交わしていた。
「梨央さんみたいに儚げな人?…日本にはたくさんいそうだけど…」
「…別に梨央さんみたいな人である必要はないんだが…私と梨央さんが出会ったのは彼女が6歳の時だし…。
誤解を恐れずに言えば、私は出会った瞬間から彼女に恋をしていた。…気がついたら恋の落とし穴に落ちていた。…そんな恋にまた再び巡り会えるとは到底思えない。だから諦めている。…もう恋はいいんだ」
少し怒ったように光が反論する。
「どうしてそんな風に決めつけるの?貴方はビジネスは大胆なのに恋には消極的すぎるわ」
縣は大人らしく優しく光に尋ねる。
「私に恋人がいないのが気になるの?」
「一般的な興味ですけどね」
ツンと顎を反らせるのが妙に可愛らしい。
…おかしいな…。光さんはこんなに可愛い人だったっけ?
「…数日だけど貴方と一緒に過ごして感じたの。貴方は上辺だけでなく優しいし、とても知的だし、男性らしいし、社交的だし…ハンサムだし」
縣はオーバーに天を仰ぐ。
「どうしたんだ?光さんが僕を褒めるなんて!いきなり雪が降りそうだ!」
「…貴方に相応しい人はきっとどこかにいるわ。だから恋を諦めないで」
思いがけずに優しい表情の光と目が合い、縣はどきりとする。
「…そうかな…」
「そうよ、必ずいるわ」
濃い琥珀色の瞳。吸い込まれそうな瞳だ…。
縣が口を開きかけた時…
「…私だって巡り会えたんですもの」
ああ…。
縣は言葉を飲み込み微笑む。
「そうだったね…」
そうだった。
…光さんには激しく愛し合う恋人がいる。