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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第3章 16区の恋人
1時間ほどして縣が階下に降りると、玄関ホールで籐のバスケットを腕に下げた光が待ち構えていた。
「さあ、出かけましょう。縣さん、車の運転をして。アンヌの許可は貰ったわ」
「…?」
光は艶めいた瞳でウィンクする。
「ムッシューアガタ、ブローニュの森でお茶をいただきましょう」
ブローニュの森は自然のままの景観が保たれた緑豊かな森林公園である。
市民たちが散策に訪れる有名な公園でジュリアンの別邸からほど近いというのに、縣はまだ訪れたことがなかった。
柔らかな芝生の上にコットンのピクニック用リネンを広げながら、光は呆れたように言う。
「ブローニュの森も来たことがないなんて驚きだわ」
縣は肩をすくめる。
「私はフランスへは遊びで来ているわけではないからね。君みたいに恋人といちゃいちゃする公園なんて必要ないからさ」
光はにやりと笑う。
「もしかして…妬いてるの?」
途端に縣は笑い出す。
「まさか!君達のことは心から応援しているよ。…早く麻宮侯爵の怒りが解けるといいね。このままだと麻宮光様は勘当された不良娘になってしまう」
大袈裟に嘆く振りをする縣にむっとする。
「余計なお世話よ!ほら、無駄口叩いていないで、お茶の支度を手伝って!」
「はいはい」
アンヌの采配でキッチンメイドが急遽拵えて持たせてくれた料理は見事だった。
胡瓜のサンドイッチに加え、スモークサーモンとクリームチーズのサンドイッチ、タルトタタン、カヌレ…。
お茶は英国式紅茶の他、熱いエスプレッソも真鍮の魔法瓶に用意されていた。
それらを光は意外なほど繊細に取り分け、縣に差し出してくれた。
晩秋のパリは肌寒いが、今日は良く晴れて日差しも暖かく絶好のピクニック日和であった。
木漏れ日が眩しい。
小さな池の水面もきらきらと光り、鴨がのんびりと泳いでいる。
縣は熱いダージリンティーを一口飲み、ほっと息を吐く。
「…緑の中で飲むお茶は格別だな」
「そうでしょ?」
光が嬉しそうに縣を見て笑った。
その笑みは驚くほど素直で愛らしく、縣は一瞬どきりとした。
今日の光は髪を下ろし菫の花が飾られたクリーム色のつばの広い帽子を被り、秋らしいマルーン色の上着に同色のスカートを履いている。
…綺麗だな…光さん…。
思わず見惚れる自分にやや戸惑う。
…どうしたんだ。光さんの美貌なんてとうの昔から知っているのに…。
「さあ、出かけましょう。縣さん、車の運転をして。アンヌの許可は貰ったわ」
「…?」
光は艶めいた瞳でウィンクする。
「ムッシューアガタ、ブローニュの森でお茶をいただきましょう」
ブローニュの森は自然のままの景観が保たれた緑豊かな森林公園である。
市民たちが散策に訪れる有名な公園でジュリアンの別邸からほど近いというのに、縣はまだ訪れたことがなかった。
柔らかな芝生の上にコットンのピクニック用リネンを広げながら、光は呆れたように言う。
「ブローニュの森も来たことがないなんて驚きだわ」
縣は肩をすくめる。
「私はフランスへは遊びで来ているわけではないからね。君みたいに恋人といちゃいちゃする公園なんて必要ないからさ」
光はにやりと笑う。
「もしかして…妬いてるの?」
途端に縣は笑い出す。
「まさか!君達のことは心から応援しているよ。…早く麻宮侯爵の怒りが解けるといいね。このままだと麻宮光様は勘当された不良娘になってしまう」
大袈裟に嘆く振りをする縣にむっとする。
「余計なお世話よ!ほら、無駄口叩いていないで、お茶の支度を手伝って!」
「はいはい」
アンヌの采配でキッチンメイドが急遽拵えて持たせてくれた料理は見事だった。
胡瓜のサンドイッチに加え、スモークサーモンとクリームチーズのサンドイッチ、タルトタタン、カヌレ…。
お茶は英国式紅茶の他、熱いエスプレッソも真鍮の魔法瓶に用意されていた。
それらを光は意外なほど繊細に取り分け、縣に差し出してくれた。
晩秋のパリは肌寒いが、今日は良く晴れて日差しも暖かく絶好のピクニック日和であった。
木漏れ日が眩しい。
小さな池の水面もきらきらと光り、鴨がのんびりと泳いでいる。
縣は熱いダージリンティーを一口飲み、ほっと息を吐く。
「…緑の中で飲むお茶は格別だな」
「そうでしょ?」
光が嬉しそうに縣を見て笑った。
その笑みは驚くほど素直で愛らしく、縣は一瞬どきりとした。
今日の光は髪を下ろし菫の花が飾られたクリーム色のつばの広い帽子を被り、秋らしいマルーン色の上着に同色のスカートを履いている。
…綺麗だな…光さん…。
思わず見惚れる自分にやや戸惑う。
…どうしたんだ。光さんの美貌なんてとうの昔から知っているのに…。