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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第3章 16区の恋人
大広間に入ると、ジュリアンが待ちかねたように駆け寄ってきた。
ジュリアンは相変わらず輝くように美しい金髪を綺麗にセットし、極上の黒い燕尾服にホワイトタイと、お伽話の王子様のような麗しい姿である。
「アガタ!ヒカル!…わあ…ヒカル、すごく綺麗だ!」
ジュリアンが目を輝かせた。
美しい令嬢はたくさんいるが、光のように謎めいたオリエンタルビューティーな魅力に満ち溢れた美しい令嬢はいない。
わけてもきめ細かな白く練絹のようにしっとりとした肌と射干玉のように黒く輝く瞳は人目をそばだてる美しさであった。
光の前では、着飾ったフランスの淑女達もどこかありふれて色褪せて見えるほどである。
ジュリアンは上機嫌で光の手を握りしめた。
「ヒカル、アガタ、お祖母様に紹介するよ。…ヒカルは初めてだよね」
「ええ、緊張するわ」
「大丈夫、お祖母様は僕には甘いから。僕のお気に入りの人には優しいのさ」
ジュリアンが広間の中央にいて、様々な来賓から祝辞や賞賛を受けている祖母、ロッシュフォール夫人のところに光と縣を連れて行った。

「お祖母様、僕の大切な友人を紹介します。アサミヤヒカル、ここにいるアガタの友人で日本の僕の永遠の憧れの女性、リオの従姉妹です」
ジュリアンに紹介され、光は膝を折り恭しくかつ優雅にお辞儀する。
「初めまして。アサミヤヒカルでございます。
マダムロッシュフォール、お誕生日おめでとうございます。本日はこのように素晴らしい夜会にお招きいただき、誠にありがとうございます」
流暢なフランス語で挨拶を述べる黒髪のオリエンタルな麗人に、ロッシュフォール夫人は驚いたように片眼鏡を上げた。
目の中に入れても痛くない愛しいジュリアンのお気に入りの友人…ヒカルはこれまで数限りなく極上の姫君を見て来たロッシュフォール夫人ですら、見惚れてしまうほどの類稀なる美貌の持ち主であった。
ジュリアンの母も雅やかな美人であるが、ヒカルは異種的な美しさと輝きを放つクイーンの威厳すら備わっているような美しい令嬢であった。
ロッシュフォール夫人は日本人女性の奥深さに内心感嘆しながら、目の前の麗人に優雅な抱擁とキスを与える。
「…ようこそ、マドモアゼルヒカル。美しい方。日本にはジュリアンの母だけでなく貴方のように気高い美女がいらっしゃるのね。素晴らしいこと」
厳しいロッシュフォール夫人にして最大の賛辞であった。

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