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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第3章 16区の恋人
不意に目の前に現れた長身の男に麻宮侯爵は怪訝な顔をする。
そして思い当たったかのように
「…君は確か…」
と口を開くのに対して縣はにこやかに挨拶をする。
「縣礼也です。お久しぶりにお眼にかかりますね、麻宮侯爵」
「…縣男爵か…。すまないが、私は今取り込み中だ。娘を連れ帰るのでね。そこを退いてもらおうか」
縣は少しも怯まず、穏やかな笑みを浮かべる。
「光さんは今、私がお預かりしています。ジュリアン・ド・ロッシュフォール氏の別邸で。…どうぞご安心下さい」
麻宮侯爵は眼を見開く。
「なに⁈君が光を⁈どういうことだ‼︎」
気色ばむ麻宮侯爵を縣は手で柔らかく制しながら、傍らのジュリアンに囁く。
「ジュリアン、麻宮侯爵と二人で話がしたい。どこか落ち着ける部屋を用意して貰えないか?…ここで事を荒立てると光さんの名前に傷がつく」
「わかった。執事に案内させる。…セバスチャン!」
ジュリアンが手を挙げて、執事を呼ぶ。
「…縣さん…!」
不安げな眼差しで見つめる光を安心させるように縣は微笑み、眼で頷く。
銀髪の厳しい顔付きの執事が素早く現れた。
「セバスチャン、お客様が少々お話をされたいそうだ。東翼の客間にお通ししてくれ」
ジュリアンが落ち着いて指示を与えた。
「かしこまりました。ご案内申し上げます。どうぞこちらに…」
縣は麻宮侯爵ににこやかにしかし有無を言わさない雰囲気を漂わせながら手を差し伸べた。
「…麻宮侯爵、参りましょう。ここで騒ぎになって光さんの輝かしいお名前に傷を付けるのは、侯爵もお望みではないでしょう」
麻宮侯爵は眼を眇めながら、唇を歪めた。
「…君は優し気に見えて策士だな。…よかろう。話だけは聞こう。だが私は必ず光を連れ帰るからな」
縣は恭しく礼をする。
「ご理解に感謝いたします」
先に歩き出した麻宮侯爵を見遣りながら、ジュリアンに囁く。
「…光さんを頼むよ」
「わかった!」
光が縣を思わず呼び止める。
「縣さん!」
縣は光の肩に優しく手を置く。
「大丈夫。心配しないで。ジュリアンと夜会を楽しみなさい」
「…縣さん…」
いつの間にかジュリアンの側に来ていたロッシュフォール夫人が颯爽とした縣の後ろ姿を見つめながらはしゃいだ声を上げた。
「まあ!サムライの果し合いが始まるの⁉︎」
「…お祖母様…アガタはバロンですよ…」
ジュリアンが溜息を吐いた。
そして思い当たったかのように
「…君は確か…」
と口を開くのに対して縣はにこやかに挨拶をする。
「縣礼也です。お久しぶりにお眼にかかりますね、麻宮侯爵」
「…縣男爵か…。すまないが、私は今取り込み中だ。娘を連れ帰るのでね。そこを退いてもらおうか」
縣は少しも怯まず、穏やかな笑みを浮かべる。
「光さんは今、私がお預かりしています。ジュリアン・ド・ロッシュフォール氏の別邸で。…どうぞご安心下さい」
麻宮侯爵は眼を見開く。
「なに⁈君が光を⁈どういうことだ‼︎」
気色ばむ麻宮侯爵を縣は手で柔らかく制しながら、傍らのジュリアンに囁く。
「ジュリアン、麻宮侯爵と二人で話がしたい。どこか落ち着ける部屋を用意して貰えないか?…ここで事を荒立てると光さんの名前に傷がつく」
「わかった。執事に案内させる。…セバスチャン!」
ジュリアンが手を挙げて、執事を呼ぶ。
「…縣さん…!」
不安げな眼差しで見つめる光を安心させるように縣は微笑み、眼で頷く。
銀髪の厳しい顔付きの執事が素早く現れた。
「セバスチャン、お客様が少々お話をされたいそうだ。東翼の客間にお通ししてくれ」
ジュリアンが落ち着いて指示を与えた。
「かしこまりました。ご案内申し上げます。どうぞこちらに…」
縣は麻宮侯爵ににこやかにしかし有無を言わさない雰囲気を漂わせながら手を差し伸べた。
「…麻宮侯爵、参りましょう。ここで騒ぎになって光さんの輝かしいお名前に傷を付けるのは、侯爵もお望みではないでしょう」
麻宮侯爵は眼を眇めながら、唇を歪めた。
「…君は優し気に見えて策士だな。…よかろう。話だけは聞こう。だが私は必ず光を連れ帰るからな」
縣は恭しく礼をする。
「ご理解に感謝いたします」
先に歩き出した麻宮侯爵を見遣りながら、ジュリアンに囁く。
「…光さんを頼むよ」
「わかった!」
光が縣を思わず呼び止める。
「縣さん!」
縣は光の肩に優しく手を置く。
「大丈夫。心配しないで。ジュリアンと夜会を楽しみなさい」
「…縣さん…」
いつの間にかジュリアンの側に来ていたロッシュフォール夫人が颯爽とした縣の後ろ姿を見つめながらはしゃいだ声を上げた。
「まあ!サムライの果し合いが始まるの⁉︎」
「…お祖母様…アガタはバロンですよ…」
ジュリアンが溜息を吐いた。