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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第8章 洗ってあげる

狭い洗面所は、二人が立つだけで窮屈だった。

「これも……脱ごうか」

そこで花菜と向かい合い、制服の袖を指でつまむ。

「…っ…脱ぐの…?」

「ああ」

「どうして…」

帰る道中、" 何も見ていなかった " 花菜の目が怯えを含んで兄を見上げる。

そんな彼女を怖がらせないように、伊月は落ちついた説明を付け加えた。

「…大丈夫。お風呂に入るだけだから」

「お風呂…? でも」

「僕が洗う。ちゃんと綺麗に…してあげる」

「……」

「ちゃんと洗いたいんだ、花菜のために」

そう言う伊月の手が、花菜の肩を撫でた。

男たちに弄ばれ…道具のように使われた身体を悼むかのように。


「…花菜は、お兄ちゃんを信用できない?」

「……っ」

直後の問いかけは卑怯だった。

不安気な声で、そしてどこかすがるような……。そんな言葉で聞かれれば、花菜が拒絶することは不可能だ。

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